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第4話
「墨野?」
2人分の紅茶を淹れ、クッキーやチョコレートをティーカップのソーサーに添える。ソーサーに載り切らなかったお菓子は器に盛りつけて、お盆に載せて、墨野の待つ部屋に向かうが、返事がない。
「仕方ないなぁ」
水坂はお盆で両手が塞がっている為、墨野にドアを開けてもらおうとしたが、応答がないので、仕方なく、紅茶を床に置いてドアを開ける。
本棚が幾つかある以外は原稿を書く為に買ったやや新しめのパソコンとやや年季の入った机があるだけの、こじんまりとした洋式の部屋。
「おーい、墨野」
水坂が呼ぶと、墨野は酔いが回ったのか、単に眠たくなったのか、机の上に突っ伏して、寝ていた。
「はぁ」
水坂はドアを開ける為に床へ置いた紅茶の載ったお盆を机まで運ぶ。壁にかかった時計を見ると、墨野とくだらない話をしたり、原稿を見てもらったりしていたが、まだ夜中の2時を少し回ったばかりだった。
「本当に何でこんなヤツ、好きになったんだか……」
水坂は寝室から薄手の毛布を持ってくると、墨野の肩にかける。先程、紅茶と一緒に持ってきた小さなハート型のクッキーを拾い上げると、口に放り込んだ。
バレンタインデーを少し過ぎてしまい、しけってしまったようなクッキー。
それはまるで自分の初恋のようで、水坂は何とも言えなかった。
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