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第2話

「ああ、ご苦労さん。こっちへ頼む」  ルスティがブルアガヴェやいくつかの野菜の入った木箱を主人の指示で『こっち』と言われた倉庫へ持っていくと、ゆっくりとおろす。 「にいちゃん、ヒョロそうだが、結構やるな」  運び屋をするには少々、頼りない細い腕に薄い体躯をしている働き盛りの若者であるルスティ。  だが、それもその筈で、この島にはあまり職業の選択肢がないのである。 「まぁ、男で運び屋じゃなかったら、モーテルか酒場の店主さん……あとは修道士か、足場の修理屋か、船乗りぐらいしかなれないですしね」  ドゥブルには断崖絶壁の上に聳え立つ修道院とその下の並ぶ島民の住居以外だとモーテルや酒場があるもの、小さな島故に両手で数えられるくらいしかない。しかも、店主というのはある程度、年をとり、何かで財をなした者がなれる職業で、まだ若く、富もないルスティがなれる職業ではなかった。 「俺も昔は足場の修理屋や運び屋もやったがな。きつかった……船乗りが1番良かった。海は海域で景色が違って良いし、色んなところに行けるし、色んな出会いもあった」 「ええ、でも、私、カナヅチなんですよ。それも極度の船酔い付き。それに……」  ルスティはこの島にあえて留まっているのだ、とその類のことを言おうとしたが、言葉は喉の奥へと消える。酒場の店主は何らかの事情があるのかと思うも、話を続けた。 「お互い、因果な島に住んでるよな。全く」 「……ええ、全くです。えーと、ブルアガヴェに、アスペルジュ、レテュ、ペルシとアイーユですね」  サインを、とルスティは受け取り票を酒場の店主に渡すと、渡された酒場の店主は慣れた手つきで自身の名前を書いた。 「じゃあ、これ。たまには酒でも飲まなきゃ、バカになんぜ? 酒場は出会いと労いの場だしな」 「確かに……じゃあ、今夜にでもお邪魔しますよ。こちらもまたお引き立てを」

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