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第5話
「多分、彼は船乗りや運び屋ではなく、修道士だったのではないかと……」
手の甲に歪ながら十字型の痣を持ち、黒いローブを着ていた。
それだけでは決めつけることはできないが、この島で長い間、信仰されていた宗派で重んじられていた十字型の痣を持っていた。それに、積荷の届け先であった修道院でよく見かけていた修道服である黒いローブを着ていたのだ。
「ふーん、ベージュの髪に青い目と手の甲の痣、ね」
「ええ、恥ずかしい話なんですけど、あんなに綺麗な人、初めて見て……」
「初めて惚れた? それで、十年もこんな島にいると?」
「……」
年が同じで、仲の良かったイスカにさえしなかった話を口に出すと、改めて自分がその名も知らない青年のことを強く思い、会いたいと焦がれていることに気づく。
ブルアガヴェを飲んだ時以上にかぁーと身体が熱くなると、酒場の店主は「悪かった」と言い、続けた。
「いつも手袋をしているから痣があるかは分からんが、ベージュの髪で青い目の若い男を一人、知っている」
酒場の店主は「Premier Amour」と、ある店名を言う。
その店もまた、ルスティがブルアガヴェや野菜、果物を届けている酒場で、観光客向けの場所だった。
「でも、いつも酒類を受け取るのは女性ですけど」
「ああ、女もいるが、女は料理番だ。男も今日なら店に出ている筈だ。ただ、修道士ではないし、もし、その男と違っても、会いたいというならそっちに行ってみると良い。にいちゃんに大海と天空の導きがあらんことを」
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