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第3話

「危ない!」  木村に会釈し、道路へ歩き出そうとする大隅の目の前にスピードをかなり出した車が通る。黒っぽい大型の車は狭い道をわがもの顔で通り過ぎ、木村は咄嗟に大隅の腕を引く。 「えっ!」  大隅が持っていたゼリーの入ったボックスは少し傾くも、木村も大隅も気にする余裕もなく、暫くそのまま固まってしまう。  液状だったゼリーが冷蔵庫で冷えて固まり、そして、ゼリーにスプーンを入れるように動き出した。 「あ、すみません!」  木村は慌てて大隅の腕を離す。「大丈夫ですか」と声をかけたり、ゼリーが傾いていないかを確認したりしたいのに、言葉が思ったように出てこない。 「いえ……こちらも不注意で。その、助かりました……」  大隅は大隅で、何とか木村にお礼を言うが、まるで今日、買ったゼリーに浮かぶ苺やフランボワーズのように顔を赤らめていた。

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