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第3話

 結局、あの質問に答えることは無かった。   返事を聞いた俊も、頷いて、笑いながら渉に「君らしいよ」と一言返しただけだった。  あの紫陽花の頃から、もう一年は過ぎようとしていた。  進学の為に、『一年は会わない』と約束して三ヶ月。  その時間はあっという間に過ぎた。  そう言えば、今日は七夕だった。 「織姫も、彦星も、会えねーじゃん」  願い事も、叶いそうもない。  思い出したこの返事を、伝えることもできない。  講堂に戻った渉は、窓の外を見た。  暗い空から、線を引いて雨が降るのが見えた。    このまま夜になるのだろう。  渉は目を閉じた。  鋭い雨音が、窓の外から響いてくる。  紫陽花が項垂れるほど、あの時も激しい雨が降っていた。

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