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二十六
水鷹がエロいことをしないと生きていけないと言ったのはいつだったか。
本人が口にしたのではなく当時に付き合いのあった女たちからの発言だったのか今は思い出せない。
でも、ストレスの発散方法として水鷹は肉体的な快楽を求めてドハマりしているのは間違いない。
口の中に三回分の精液があるがまだ水鷹は勃起している。
さすがに四発目を受け止めるのは無理だ。
口を開けたら精液が出てしまう。
俺が唇のはしからこぼれる精液を指でぬぐうと息を弾ませながら水鷹が「吐いてくれる?」と頭のおかしなことを口にする。
もう満足したから口の中の精液を飲めというならともかく吐けってなんだと目で問えば「れろって、げろって、うえって、口を開いてそのまま精液と唾液の混合物を垂れ流して」と言い出した。やっぱり頭がおかしい。それにOK出す人間はこの世にいないだろう。
「ちゃんと藤高の身体はタオルでふくから!」
そういう問題じゃない。
「タオルは濡らすし、お湯でぬらすからあったかいタオルでスッキリするはず!」
必死な水鷹のプレゼンにいつものように俺は折れた。
口の中のものを飲もうが水鷹に見せつけようがどうでもいいことだった。
口を開くと唇からあご、首を伝っていく俺の唾液成分の多い水鷹の精液。口の中のものを押しだすように舌を突き出す。
バカっぽい状態になっているはずだが水鷹はメチャクチャ喜んだ。
「写真撮りたいっ! いや、はい……そうですね、ダメですよね」
俺の視線に勝手にへこみながら水鷹がタオルではなく指先で俺の汚れた肌に触れる。
まるで手で俺の身体にぬりこむように精液を広げていく。
俺が「おい」と催促すると口元と首筋はタオルでふかれたがそれ以外の部分はいまだに水鷹の手が置かれている。
目が血走っている水鷹はやはり特殊趣味なのか乳首を指で押してくる。
「オレの中で藤高が一番エロかった瞬間が更新されちゃった」
そう言いながらやっと水鷹は俺の身体をふきはじめた。
満足したらしい。
「ビジュアルって大事」
「飲むより出す方が派手だってことか」
「オレの精子を藤高の胃酸で溶かされて藤高の一部になるよりも吐き出されて無意味に死んでいくんだと思うとたまんない」
哲学的なのかMなのかよくわからない。
「藤高の口の中がオレの精液に汚染されてるって最高だね」
「小便でも同じこと言えたか?」
「藤高さまマジ男前っすね!! 真似できねぇっていうか、やめてよ。危なかっただろ、アレ」
「勃起すると膀胱が閉じられるんだかなんだかで尿は出ないって聞いた」
「出てくるのは精液だって知っていたからこその催促ですか! いやそれにしても」
満面の笑みを俺に向けてくる水鷹。
これを見るために俺は他の誰もしないだろうことをしてしまう。
好きな相手の喜ぶことをしたいと思う気持ちは消えない。
変態だと思うし、ドン引きするし、最低だと幻滅もするけれど好きなままだから仕方がない。
俺が水鷹に何かをするたびに水鷹は俺に好きだとか愛しているとか口にする。
感謝の言葉でしかない告白に意味はない。
それでも、喜びすぎないように受け流している水鷹のなんの重さもないはずの好きという言葉を支えにしている。
水鷹は嘘でも冗談でも俺を嫌いだとは言わないし、俺に嫌われたがったりもしない。
悪ふざけばかりしている水鷹だが何もかもを俺が許すとは思ってない。
今回の俺が不能になったこともまた許してもらえないと覚悟していたはずだ。バカっぽく見えても本当のバカじゃない。
「藤高、勃ってる」
嬉しそうに俺の下半身に注視するのはやめてほしい。
俺自身、自分の反応が分からない。下は触ってないし、興奮した覚えもそれほどない。
水鷹の精液を口に含むことに興奮しないわけがないけれど新たに知った水鷹の性癖を心の中でどう処理すればいいのかわからなくて勃起どころじゃない。
「それでさ、それでさ! 藤高の尿道にアイスを入れるって」
「殺すぞ」
「すみません。冗談じゃないけど冗談にするんでキレないでください」
水鷹の頭がイカれすぎていて言葉を聞く気にならない。
「普通に尻じゃねーの」
「よろしいんでしょうか?」
「今日はそのつもりだったんだろ」
今更、逃げ腰になっている水鷹は俺とヤりたくないということではなくヤりたい気持ちが大きすぎて空回っているらしい。緊張して体が動かないと言い出した。涙目で勃起して「藤高とエッチしたいけども、どうしよう」と言って脱いだあずき色のジャージを叩く。
「結構いまでもいっぱいいっぱいだけど、本番ヤったらオレのダメ人間度が加速する」
「今更だな」
「ですけども!! メスの妊娠時期に攻撃的になるオスみたいな感じになりそう」
「手当たり次第に噛みつくって?」
「藤高にいやらしく触ってくる奴、絶殺」
「それも今更だな」
「そうでした!?」
水鷹と誰かを交えてセックスをするが水鷹がまるで知らない相手が俺にコンタクトをとってきて粘着質に付きまとわれたりする場合は絶対に水鷹が間に入って助けてくれた。
こういうときの対応がさすがは瑠璃川だなと思うところでお金で人を雇ったり、その相手の家族の弱みを押さえて動かなくさせる。普通の人間では持っていないような人脈を使ってスムーズに俺の周囲から俺に危害を加えようとする人間は排除される。
俺の手では負えない存在は気づけば水鷹が弾き飛ばしている。
その際に瑠璃川としての名前や人脈をフルに使っているので気が付かないわけがない。
「それでは藤高オナホ計画をはじめたいと思います」
最低な計画名に苦情を言うと水鷹が泣きそうなので聞き流してやることにした。
一カ月の間余裕で俺の尻をいじっていたのに今日は穴のしわを撫でるのすらドキドキしすぎて死にそうという童貞っぽさ満載。ここはもう面倒だから俺がさっさと騎乗位になればいいんだろうか。
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