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第2話
かくして、レンさんならぬ恋さんの名前がわかったわけだが。
「百円ものじゃないよな……」
アクセサリー類を陳列中、ピンキーリングのコーナーをまじまじと見ていた。
百円ショップで売られるアイテムも専門家を唸らせるほどか、価格に負けず劣らずのクオリティーさを評価されつつあるが、やはり恋さんが身に着けているものとは異なる。あくまで素人目線であるものの、一目見ただけで繊細なデザインと宝石の輝き方が違っていた。
学生さんでも買えるものなのか?
昨夜ネットで調べたところ、ゼロの数に悲鳴を上げそうになった。
「はーじーめ君!」
「は、はい!?」
「どうしたんだい、ぼさっとして」
左横に店長の成木雅 さんの顔があり、もう少しで腰を抜かすところだった。踵を浮かせたまま座ったのもあり、バランスが崩れたのだろう。案の定、足を挫いたため手を借りる。情けないし、痛い。
「バックヤードの湿布貼りに行こっか。悩み事があるのならバイト後聞くよ」
成木さんは五人のお子さんがいるパパだ。趣味は子供達と山登りらしい。自分より身長の高い男を軽々と起こし、心配そうな色を残しながら微笑む。
「ありがとうございます」
右足を踏み出すと足首がじくじく痛み、顔を顰めてしまう。
早く治さないと。今日は恋さんが来店する日だ。
そう奮起するも、恋さんが店に姿を見せることはなかった。
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