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第3話
「忍、手繋ごう」
ポテポテ地面を見つめて自由に歩けてることに感激している最中、嫌な提案をされて忍は気分を落とした。
足を止めて振り返ると、彗がにっこり微笑み手を差し出している。
男同士で手を繋いで登校って……
手を繋ぐことに躊躇する忍に彗がワントーン下げた声で名前を呼んだ。
「忍……」
名前を呼ばれ、忍はビクっと身体を竦ませると駆け足で男の隣へ近寄り手を繋いだ。
「忍の手、冷たっ」
握られた手を強く握り返し、彗はハハっと笑った。
男の機嫌を損ねてないか心配で伺うように見つめると、それを察し、彗がニコリと笑う。
「怒ってないから大丈夫だよ」
その言葉に泣きそうなぐらい忍は安堵する。
そして、再びポテポテと地面を見つめて歩き始めた。
学校へ着くなり校門には彗の親衛隊がズラリと並んでいる。
最悪……
心の中で悪態つき、俯いて視線を地面へ縫い付ける。
極力、自分の存在を薄めるように忍は息を潜めた。
「彗様、おはようございます」
「彗様、今日も美しいです」
「彗様、今日のお昼は僕とご一緒して下さい」
彗様、彗様と同級生の一年生から先輩にあたる三年生までの生徒が男へうっとりさせながら擦り寄った。
忍は男から手を離し、邪魔にならないようにその場を離れたら、離したその手を瞬時に捕まれ責めるように問われた。
「誰が離れていいって言った?」
「え!?ご、ごめん」
直ぐに手を握り返すと、彗はその手を引き寄せ忍を抱きしめた。
「お前らウザい。邪魔。忍がいるから退け」
冷たい瞳と声で吐き捨てるように命令すると、周りを囲む親衛隊は黙って道をあけた。
そして、忍を憎悪のこもる瞳で睨みつけた。
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