怖い……、っていうか、俺も好きでこいつの側に居るんじゃないのに 周りの刺すような視線に忍はマフラーに顔を埋めた。 「一ヶ月も登校しないから辞めたと思ったのに……」 親衛隊の一人が忍へ不満の声を囁く。 その瞬間、男の目の色が変わり、その男子生徒のネクタイを掴んで引き寄せた。 「忍の事に口出す気か？殺すぞ？」 凍りつくかと思う程の殺気に男子生徒は身を竦めて固まった。 投げ飛ばすように押すと、男子生徒は地面へこけた。 すかさず彗はその生徒の胸元を踏みつけ、冷徹な視線を向ける。 「ひっ！ゆ、……許し下さいっ！！！」 足にクグッと負荷を掛けられ、男子生徒は痛みに顔を歪める。 「忍、許してあげる？」 いきなり話を振られて驚いていると、彗は優しい声でもう一度聞いてきた。 「忍の事、監視してるキモいやつだし殺しとく？殺すなら俺に任せてくれたらいいから」 笑顔でとんでもない事を言う男に青ざめながら、忍は首を横へ振った。 「だ、大丈夫！俺は大丈夫だから、もう許してあげよ！？」 「……忍って本当に優しいね。こんなゴミクズ相手にも寛大で尊敬するよ」 彗は男子生徒から足を下ろすと、虫でも見るような視線を向け、顔面を蹴り上げた。 「彗っ！！！」 忍は男の行動を咎めるように大声で名前を叫んだ。 「忍、可愛い。こいつを蹴ると俺を呼ぶなら、まだこのゴミの存在価値はあるね」 笑顔でそう言うと、彗はもう一度ゴミという男子生徒の腹部を蹴る。 「彗！！止めろっ！」 悲鳴を上げて生徒が身を丸くするのを見て、忍は顔面蒼白になった。 彗へ抱きつくように止めに入ると、男は嬉しそうに抱きしめ返してくる。 「忍は本当に優しいね。こんなゴミに優しくしなくていいからさ、もっと俺に優しくして？っていうか、俺にだけ優しくしてよ」 ちゅっとおでこへキスをして、上機嫌に微笑む男に忍は青い顔で固まった。 「そんな可愛い顔してたらまた壊したくなる」 耳元で笑いながら囁かれ、忍はバッと彗を押し退け距離をとった。 「嘘だよ、嘘！忍は本当、可愛いなぁ〜。悪いことしない限りお仕置きはしないから大丈夫だよ」 よしよしと頭を撫でて宥めてくる男に忍は小さく震えた。