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第10話
あの時、いいよ。なんて言わなきゃ良かった。
あの時、父に着いて行かなきゃ良かった。
ずっと、ずっと彗と出会ったあの日を忍は後悔していた。
彗は忍を物凄く気に入り、出会ったあの日から毎日忍を呼びつけた。
幼かった忍も最初は喜んで遊びに行ったが、通っていた幼稚園を辞めさせられ、彗の通う幼稚園へと編入させられ、不快な気持ちに苛まれた。
毎日、毎日、彗といた。
他の子と遊ぼうとすると、親に注意をされるようになった。
悲しくて、どうしてなのか分からなくて、忍は悩んだが、それでも周りは彗と居るように勧めてきた。
小学校へ上がってからも彗と同じクラスで毎日を彗と過ごした。
話し掛けてくるクラスメイトに嬉しくて近寄っていくと、次の日からそのクラスメイト達は目も合わせてくれなくて、忍は泣いた時もあった。
そんな時も彗が側にいてくれた。
小学校6年間ずっとそんな状況で、さすがの忍もおかしいと気づき始めた。
中学へ上がり、彗から離れようとしたがクラスは勿論一緒だった。
友達を作ろうと沢山の子に話し掛けたが、皆んなに無視をされた。
先生や親に相談したら皆んな口を揃えて、
「彗君がいるでしょう」
と、言った。
まだ幼かった自分は彗に縋って過ごした。
中学卒業をして高校へ進学し、初めて彗とクラスが分かれた。
不安と期待に心が躍り、忍は彗以外の友達を作ろうと意気込んだ。
彼と距離を置こうとした。
休みの日も毎日一緒にいたが、断るようになり、クラスメイトと遊びに行った。
しかし、それが駄目だった。
彗の逆鱗に触れてしまい俺は完全に自由をなくした。
今までも自由なんて無かったに等しいが、比べる事も出来ないぐらい全てを彗に囚われてしまった。
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