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第11話
保健室を出て、忍は憂鬱な気持ちに足を止めた。
今すぐ男のいる一組の教室へ向かうべきなのは分かっている。分かっているのが、足が進められなかった。
「はぁ〜………。どうしよう」
天を仰いで息を吐き、忍は固まる。
その時、確かめるような声が忍を呼んだ。
「あれ?工藤……!?」
呼ばれて振り返ると、そこには一ヶ月前まで同じクラスメイトだった如月 健吾(きさらぎ けんご)が目を丸くして立っていた。
「え!?如月?」
指をさし、忍は如月の名前を口にした。
「おぉーー!なんだよ、お前!超久しぶりじゃん?元気だったかー?」
笑顔で懐かしむように如月は駆け寄り肩を組んでくる。
人懐こく、いつも笑顔でクラスの中心的なムードメーカーだった如月はいつも忍に優しかった。
「うん……。ちょっと休んでたけど、1組に編入してまた通う事になったんだ」
「1組!?何で1組?3組に戻ってこいよー」
残念そうに笑う如月に忍は苦笑した。
「あーーー!アレか?彗様?」
彗の名前が出て、忍に緊張が走った。
「なんか、幼馴染みなんだって?」
「……うん」
「今まで一回もクラス違わなかったのに、今回初めての別クラスらしいじゃん?それで彗様不貞腐れてるって、もしかしてマジ話なわけ?」
首を傾げて聞いてくる如月に忍は曖昧に笑った。
マジ話です。
って言えたら楽だろうなぁ〜……
「まぁ、お前もなんか苦労してるっぽいし気、抜けよ?」
ぽんぽんと肩を叩かれて、忍は情け無い顔で笑う。
「……ありがとう」
「しけた面すんなよ〜。別にクラスが違ってもまた遊びに行こうぜ?」
にかっと笑って、誘ってくれる如月に忍は目を見開いた。
「なんだよ?クラス違うと、遊んでくれないのかよ?」
口を尖らせて不満を言う如月に忍は首を横に振った。
「ううん!!違う。その、ありがとう……。俺もまた如月と遊びに行きたい」
素直な気持ちを告げて忍は微笑んだ。
「おぅ!じゃあ、俺の番号教えとくわ!」
そう言って如月は携帯電話を取り出した。だが、忍は自分が手ぶらなことを思い出す。
「ごめん。俺、今携帯なくて……」
「じゃあ、携帯番号教えとくな。メアドも」
そう言いながら如月は持っていたノートを少しちぎって、ボールペンで自分の連絡先を書いた紙を忍へ渡した。
「いつでも連絡くれよ」
手を振って如月は去っていき、忍はそのノートの切れ端の紙切れをぎゅっと、嬉しそうに握りしめた。
彗に絶対に見つからないようにしよう
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