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第17話

「39度7分……」 体温計を見つめてため息を吐くと、忍はソファに身を沈めて瞳を閉じた。 頭、痛い…… 吐き気もする…… ぼんやり自分の症状を考えていると、部屋の扉が開かれた。 「彗様?」 聞き覚えのある声の主に忍は目を開いて視線を向けた。 「……忍か?」 確かめるように聞きながら近づいて来る人物に忍は緊張で息を潜めた。 「なんだ?また体調を崩しているのか?」 呆れたような口ぶりで自分を見下ろす人物を忍は小さく呼ぶ。 「父さん……」 父と呼ばれた男は部屋を見渡し、息子を心配そうに見つめた。 「ベッドで寝なくていいのか?」 「………ん」 頭を撫でられ、気まずさに小さく頷く。 父親はそんな忍に口籠るように聞いた。 「彗様を知らないか?」 「………多分、料理長のとこだと思う」 熱が高過ぎて答えるのもしんどかったが、久しぶりの父との会話に忍は嬉しかった。 「料理長?お前、もしかしてまた彗様を使いパシリにしてるんじゃないだろうな?」 困ったような声で聞かれて、忍は嫌そうに視線を外す。 「昔から彗様に気に入られてるからって甘え過ぎだぞ?体調不良も、自己管理能力がないからだ。彗様の手を煩わせないようにきちんとしなさい」 顔を合わせると彗贔屓の父に毎度説教を受ける忍はこの話題が嫌で仕方ない。 「好きでお気に入りな訳じゃない……」 寧ろ、このお気に入りの座を誰かに譲りたいぐらいだ 黙っていればいいのだが、イライラが募って、つい口答えしてしまった。 また叱られるとは思ったが、父は困ったように溜息を漏らして、優しく忍の頭を撫でた。 「忍に触るな」 甘えるようにその手に身を委ねていたら、突然冷たい声で短く命令する声が忍の父親の手を止めた。 「彗様!」 扉へ振り返り、彗を見るなり頭を下げる父に忍は目を反らし、彗が戻ってきた事に再び重い溜息を吐いた。

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