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第20話

「んん……」 あれから一人になった忍はゆっくり眠った。 どれくらい眠ったのか自分でも分からず、近くにある時計へ視線を向ける。 時刻はもうすぐ23時になる。 窓の外は暗くてとても静かだった。 部屋に彗がいないのを確認すると、まだ習い事から戻ってきていないようで忍は気持ちが楽だった。 フラつきも無く立ち上がって、ソファまで歩く。 寝る前に放置したお粥と雑炊が散乱していて、空腹を感じた忍は手前にある冷めた鯛粥を手に取った。 「……美味しい」 冷めても米が伸びても流石一流の食材とシェフの料理だなぁと感心しながらお粥を口に運び、同時進行で熱を測った。 モグモグ食べてると電子音の音がなり、脇から体温計を取り出すと熱は36度8分まで一気に下がっていてホッとした。、 やっぱり、精神的なものからなのだと痛感しながら、また一口冷めた鯛粥を頬張った。 「あっ!忍、起きてる!」 突然、ノックも無く部屋の扉が開くと、嬉々とした彗の声が聞こえた。 男の声で一気に食欲がなくなり、忍は粥とスプーンをテーブルへ置く。 「熱、下がった?」 「うん」 「良かった。食欲も出てきたんだな」 彗は笑顔で忍の隣へ座り、抱きついてきた。 「彗は御飯食べた?」 「うん。食べたよー。って、なに!?これ、もしかしてさっきの残り食べてんの?」 「うん。凄く美味しい」 信じられないという目で見てくる男に忍はなんてことないと肩を竦めたが、彗はテーブルの上のお粥達を足で遠ざけた。 「忍は残り物とか食べちゃダメ。直ぐに温かい新しいもの作らせるから待ってて」 「もう、食べたからいらないよ?」 「じゃあ、口直しにデザート運ばせる」 男はブレザーの内ポケットから携帯電話を取り出し、電話をかけ、フルーツの盛り合わせを持ってくるように命令して電話を切った。 「あぁー。疲れたぁ〜」 ネクタイを緩め、ソファへ深く座り直し一息つく彗に忍が遠慮がちに聞いてみた。 「習い事って、何してるの?」 「いろいろー」 「色々って?」 「んー?マナー講座的なのが多いかな」 話したくないのかザックり答える男に忍は黙り込む。 「忍は?何時に起きた?」 「ついさっき、23時前」 「疲れてたんだねー」 よしよしと頭を撫でられ、忍は誰のせいで。と心の中で悪態つく。 「明日からまた学校休んでゆっくり過ごしたらいいよ」 優しい声でそう言われ、忍は悲しくなった。 「そんな顔しても駄目。行かせないから」 心の中を読んだかのように、瞬時に咎められて忍は更に落ち込んだ。 「今度はいつ行かせてくれるの……?」

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