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第23話
side 彗
「彗様、一緒に御飯食べてください」
「彗様、今日は天気がいいから外で食べませんか?」
「彗様、飲み物買ってきます。何がいいですか?」
昼休み、昼食を食べようと席を立つとわらわらと人が自分を取り囲んだ。
毎日の事で彗に取ればなんてことない日常なのだが、唯一いつもと違ったのが自分の携帯電話が鳴った事だった。
「はい」
携帯電話に出ると、あれ程騒がしかった周りの人間達がピタリと黙る。
電話をかけてきたのは自分専属の執事からだった。
「忍が?」
内容が忍絡みで彗の綺麗で整った顔が怒りに歪む。
「車を寄越せ」
執事へ指示を出した彗は電話を切ると、近くにいた自分を慕うクラスメイトの顔面を思い切り拳で殴りつけた。
「ギャアッ!!!」
うっとり自分を見つめていた可愛らしい男の子は吹き飛び、地面へ倒れ込む。
「退け」
ギリっと奥歯を噛み締めて吐き捨てるように命じると、群がっていたクラスメイト達が恐怖で後退し、道を開けた。
その道を足早に進み、男は校門へ向かった。
逃げた?忍が?
どういう事だ……
俺から逃げれるって思ってんの?
イライラが止まらず、彗は校門まで進む間にすれ違う人間を手当たり次第殴りつけていった。
悲鳴をあげて倒れこみ、周りは彗を避けるように散っていく。
昔から忍が分からない
理解が出来ない
俺の知る人間は皆んな俺に媚びる
俺の容姿、財力、才能に群がる。
誰もが逆らわない。
実の親ですら俺に命令はしない。
なのに忍だけはいつも違う。
初めて会ったあの日から決して俺に屈しない忍が愛おしくて、恋しくてたまらない。でも、その反面時々、殺したくなるくらい憎くなる。
どうしたら俺のものに出来る?
ねぇ、忍……
そんなに俺を怒らせて楽しいの?
side 彗 終わり
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