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第25話
「………彗」
声が震える
体が崩れ落ちそうなぐらいの恐怖感に忍は瞬きすら出来なかった。
「どうして部屋を勝手に出た?」
彗は笑顔を浮かべてこっちへ一歩一歩近付いてくる。
笑ってるくせに全く笑ってる様には見えなくて、忍の恐怖は更に増した。
「誰が部屋を出て良いと言った?」
謝らなければいけないと分かってはいるのだが、怖くて口を開く事すら出来ない忍はその場で立ち尽くすだけだった。
そうしている間に男は忍の目の前までやってきた。
「忍って、本当に俺の言うこときかないよね」
ふふっと楽しそうに微笑む彗に一瞬、そんなに怒ってないのかもしれないと忍は肩の力を抜いたが、その瞬間髪を鷲掴みにされて強い力で引き寄せられた。
「いっ……!」
彗からこんな暴力的な事をされるのは久しぶりで忍は新たな恐怖で体が震えた。
「甘やかせ過ぎたかな……」
ボソリと耳元で囁かれ、忍は腹部に強烈な痛みを感じた。
「ぐっ……」
目の前が真っ暗になり、彗に覆いかぶさる様に倒れ込むと、そのまま忍は意識を手放した。
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