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第29話
結局、男のラストスパートに忍は付いてこれず、絶叫をあげて意識を手放した。
彗は忍に先程の媚薬の解毒剤の薬を口移しで飲み込ませてやる。
即効性がある分、忍は疲労感はあるものの規則正しい寝息で眠りについた。
身体を綺麗にしてやり、使用人に命じた男は新しく用意させた部屋へ忍を抱いて移動した。
綺麗なベッドへ忍を横にならせると、彗はピクリとも動かない忍をジッと見つめた。
「………なんでこんなに好きなんだろ」
忍の額へかかる髪をそっと除けながら独りごちる。
忍に初めて会った日、ただ綺麗で可愛い子だと思った。
父さんが俺にまた新しいオモチャを用意したんだと思い、今度はどんな風に壊そうか心が躍った。
でも、忍は俺の手を払いのけて部屋を出て行こうとして、驚きと腹ただしさに呆気にとられ、出た言葉は………
「お友達になってくれる?」
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