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ある日の日常 1
好きな人が男だということを佐木 に話してからというもの、やたらと店へ連れて行けという。
郷田一太 の相手である沖駿也 がどんな人物なのか気になっているのだろう。ゆえに店に連れて行きたくなかったのだが、流石、同じ刑事だけある。カウンター席にその姿をみつけたときには脱力した。
「よう、郷田」
満面な笑みを浮かべ手を上げる。やたらと急いで帰ると思ったが、このためだったとは。
「郷田君の先輩なんだってね」
河北 が隣でビールを飲んでいる。
「こんなイケメンの刑事さんもいるんだね」
と常連の一人がいう。
はじめてきたというのに佐木は店に溶け込んでいた。郷田が受け入れられるのには時間がかかったというのに。
郷田はいつもの席に腰を下ろす。すると沖がいらっしゃいとお茶とおしぼりを置いた。
今日はカレーライスだ。何が食べたいと聞かれて郷田がリクエストをした。
季節の野菜を使い作ったカレーなのだが、冬は豚肉、大根、蓮根、里芋が入っている。
初めて食べたときは驚いたが美味くて、楽しみなメニューの一つとなった。
「今、用意するから。佐木さんと河北さんもご飯にしますか?」
「はい。お願いします」
「よろしくね」
食事を用意する間、佐木が沖に話しかける。
「郷田がいつもこちらのお店の料理が美味いと話すものだから気になってて。念願かなってやっとお店に来れました」
「わ、ありがとうございます」
にこやかに会話をする二人に、おもわず佐木を睨みつける。
「郷田ぁ、顔が怖いぞ~」
「もともとこんな顔です」
佐木から顔を背けて沖を見ると、本当に怖いよと指で口の端を持ち上げられた。
「沖さん……」
あなたまでそういうのか、そんな目をするといいたいことに気が付いたか、苦笑いを浮かべた。
「はい、カレー」
三人の前にカレーを置く。
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