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心の拠り所 4
酔い潰れた佐木は西久保が送っていくからとタクシーに乗り込む。それを見送り、自分も家に帰る為に歩き出す。
今日はもう店は閉まっている時間だ。だが今では郷田の帰るルートとなっており、明かりの消えた店の前を通り過ぎ、思わずため息がこぼれてしまう。
暖簾をくぐり、店主の笑顔の迎えられ美味しい料理を食べて……、そんなことを考えていたらドアの開く音が聞こえ、奥からラフな格好をした沖が出てきた。
「わぁっ」
外套の灯りの下、大きな図体の男が突っ立っていて驚いたのだろう。
すぐにそれが郷田だとわかり、沖は安堵の息をついた。
「驚かせてしまってすみません」
「うんん、郷田君って解って安心した。今まで仕事だったの?」
「いえ。同僚と一緒に飲みに行ってました」
「そうだったんだ」
外に出てきたということは、何処かへ向かう途中だったのかもしれない。
邪魔しては悪いと思い、「おやすみなさい」と頭を下げて帰ろうとしたところに、沖が腕をつかんで引き止める。
「まって。夕食はちゃんと食べたの? お腹、空いてないかな」
そう聞かれて、
「そうですね、少し空いてます」
と素直にこたえる。
「あの、良かったらご飯、食べていかない?」
既に店は閉まっている。
「しかし……」
「店ではなく家の方で」
「ですが、何処か行かれるのでは?」
「コンビニに行こうとしていただけで、特に必要なものがある訳じゃないから」
そこまで誘われて断ることはできない。それでなくとも沖の手料理を食べたいと今さっきまで思っていたのだから。
「お言葉に甘えさせていただきます」
そう頭を下げると、沖が真面目だなぁとくすくす笑う。
「おいで」
と手招きをされ、そのあとに続いた。
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