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心の拠り所 2
歓迎されざる者。そう思われてもあの味を求めてしまう。出入り口の戸を開けて暖簾をくぐる。
「いらっしゃいませ」
流石に店主は微笑みを浮かべていたが、数名の客が自分を見て警戒している。きっと昨日もここに居たのかもしれない。
それから店が開いている時間帯に帰れる時は寄った。しかも、一週間ほどたったころ、はじめて店主に挨拶以外で声をかけられた。
常連らしき客の視線を気にし、この悪い雰囲気を少しでも良くしようと思ったのだろう。
「お兄さん、この頃、毎日来てくれるよね」
と。
刑事だということはあまりいいたくなかったので、それは伏せて仕事の都合で越してきたと話す。
店主が話しかけてきたこともあってか、聞き耳を立てていた周りから少しだけ警戒が薄れた。
それから数日後、刑事だとばれた。強盗犯を逮捕した所を見ていた人がいたのだ。
二人に名刺を渡すと、河北と名乗る男が自分と店主の自己紹介をし、郷田のことをどう思っていたのかを正直に話した。
見た目から筋ものだと誤解されることはあるし、強面ゆえに舐められにくいよなと同僚にはいわれている。
それが切っ掛けで、今まで警戒していた人からも声を掛けられるようになり、中へと受け入れられたようだ。
その様子を沖が微笑みながら見ており、それが嬉しいと思う。
店にいる時間はとても心地よく、郷田の癒しの場所になりつつある。
だが、ひとだび事件が発生すると解決するまで家に帰れない時もあり、この頃はコンビニの弁当やパン、カップラーメンなどで食事を済ませていた。
沖の作った暖かくて美味しい料理が食べたい。たまに目が合い、微笑んでくれるその姿を思い浮かべる。
「おい、いくぞ」
すっかり沖の作った料理のファンになってしまった。仕事中に想ってしまうくらいに。
そんな郷田に、相棒である先輩の佐木(さき)が背中をおもいきり叩いた。
身長は郷田より少し低いくらいで、立っているだけで威圧感を与える郷田に対し、柔軟性のある彼は話を聞きだすのがうまい。
郷田は彼と組むようになって随分と仕事がやりやすくなった。
「はい」
帰宅途中の女性に男が背後から襲い、腕をナイフのようなもので斬りつけるという傷害未遂事件が発生した。
幸いなことに通りかかった高校生が女性を助け、彼女は無事であった。
証言から犯人は彼女の元・恋人だった男で、数日前からストーカーをしていたらしい。
男は彼女を襲った後、家へは戻らず逃亡をした。その足取りを追うために聞き込みをする。
有力な情報をもとに、防犯カメラに男の姿を見つけ居場所が確定した。
昔通っていた大学の近くにある漫画喫茶で寝泊まりをしていた。そこに踏み込み逮捕となった。
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