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心配する 3

※※※  約束通り店にやってきた郷田に、河北がさっそく声をかける。 「郷田君、来ない間、心配してたんだよ。ねぇ、駿ちゃん」 「実は、昨日、郷田君に会ったんですよ」  ね、と、目を合わせる。 「夕食をご馳走になりました」 「え、えっ、ちょっと、どういうこと」  期待するような目で沖を見る河北に、違いますからねと先に釘をさす。 「コンビニに行こうと思って外に出たら、偶然会ったんです。で、食事に誘っただけですから」 「へぇ、そうなんだぁ」  にやにやとした表情を浮かべている河北に、これ以上、余計な事を言われないうちに二人の前に食事を出す。 「今日は鶏もも肉のトマト煮です」  目の前に食事に郷田の意識はそちらへと向いた。 「頂きます」  いつものように手を合わせる郷田に、召し上がれと言葉を返す。  鶏肉は出す前に一口大にカットするのだが、それを箸でつかんで一口。そしてご飯を口の中へとつめる。  目元が細められる。それは味を気に入ってくれたということ。いつも見ていたのでわかるようになった。 「やー、今日もおいしねぇ」  河北も気に入ってくれたようで、二人はしばし食事に夢中になっていた。  あっという間に皿が綺麗になり、ごちそうさまと手を合わせる。 「お粗末様でした」 「そうだ。郷田君、連絡先の交換しようよ」  河北がポケットからスマートフォンを取り出すと、 「はい。あまりこちらから連絡はできませんが、何か気になることがあれば連絡ください」  とスマートフォンを取り出して連絡先を交換しあう。それを眺めていたら郷田と目が合った。 「ほら、駿ちゃん、スマホ」 「へ、俺も?」  自分のまで聞かれるとは思わず、嬉しくて声が上ずってしまった。  だが、郷田は別の意味にとらえたようで、スマートフォンをテーブルに伏せておいた。 「勘違いしてしまいました」 「あ、いや、教えてくれるかな?」 「はい」  河北のお蔭で郷田の連絡先を手に入れることができた。またご飯を食べにおいでと誘うことが出来る。  口元がふよふよと緩みだす。バレぬようにスマートフォンをしまうふりしてカウンターに背を向けた。

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