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召し上がれ
先ほどから郷田からのメールを眺めている。
<店でなく沖さんの家に行っても良いですか。お話したいことがあります>
良いよという返事はしたが、この前のこともあり都合よく期待してはバカだなと自分を諌める。
「きっとご飯のお礼をしようとか考えているだけだよね」
あのまま郷田に抱かれたかった。だが、途中で男だということに躊躇い、やめてしまったのだろう。
「俺、何、期待してんだよ」
心の奥底で、郷田は自分の行為を受け入れてくれると思っていた。
「どうしよう、昨日のことを謝られたら」
もう、彼のことをただの客として見れない。
なのに、このまま気まずくなって、店に来なくなってしまったら。
そんな最悪な展開がよぎり、急に怖くなってきて、沖は携帯をテーブルの上に置き自分の身を丸くした。
店に来ない郷田に、今日も忙しんだね、会えなくて寂しいねと言われる。
この後に会う約束をしているのだが、そうですねと相槌をうっておいた。
「駿ちゃん、なんか様子がおかしいなぁ。郷田君と何かあった?」
「何もありません」
鋭い。
思わずグッと喉が詰まり、どうにか笑顔を浮かべて誤魔化してみたものの、河北には感づかれたかもしれない。
様子を窺うが、それ以上にツッコんで聞いてくることもなく、食事を終えると少し話をして帰って行った。
「はぁ……。今はお店のことに集中しないとな」
つい、この後のことばかり考えて、失敗しかねない。
気持ちを切り替え、今は食堂の店主として料理を作ることに専念した。
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