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第6話

「地下牢に連れて行って」 サロメの願いはそれだけだった。 兵士も知っていた。 美しい聖者がそこにつながれたことを。 「あの人に会いたい」 サロメは散々犯されつくされた身体を紅くそめて言った。 兵士に腹の奥でぶちまけられて、数え切れないほどイって、胸の乳首の色が変わり腫れるまで弄られたくせに、 まだ穴から垂れ流し、ペニスも濡れたままのくせに、頬を染めて、清らかに。 恋情を隠そうともしなかった。 兵士は項垂れ、でもサロメの手をとり口付けて約束した。 恋人のように抱きしめても、ここにいるのは恋人ではない。 身分の差以上のものかある 「明後日。夜に」 その声は重く痛かった。 でも、サロメは嬉しそうに何度もうなづいたのだった 約束の夜。 サロメは兵士の手を取った。 黒いマントに身を包む2人はまるで駆け落ちする恋人のよう。 でもサロメの上気した頬は隣りにいる兵士のためではない。 「おかしな男です。わけの分からないことをずっと叫んでいる」 兵士は聖者について言う。 「おかしなこと?」 サロメは聞く。 あの人のことなら何でも知りたい。 知ってることは僅か。 その姿と名前、そして聖者であることだけ。 「救済は求めることにこそある、と。そして、兄を殺し兄の妻を娶った王でさえ、夫を殺した相手と結婚した妃でさえ、求めたなら救われる、そんなことをあの男は言ってます。世界は神の中にある、と。だから王は悔い改めろ、と」 分からないと言ったように兵士は言った。 分からないはずだ。 犯した罪は無くならない。 それは誰もが知っている。 だから誰もそれに触れない。 王が犯した罪について。 国を手にするためにしたこと、そして、兄の妻としたこと。 王は裁かれることはない。 王だからだ だが罪は消えない。 消えるはずがない。 いくら聖者とはいえ人の罪を消せるはずがない。 それは誰もが知っている。 王は現世で享楽の限りを尽くすだろう やりたいように。 だが地獄にいく。 みんな知ってる。 そうでなければならない だが、聖者は王が救われると言っている。 それは確かにおかしなことだった。 王が聖者を捕まえたのはその罪を思い出させその結末を思い知らせるからだ。 そして殺さないのは、聖者への恐れと。 聖者が繰り返す「救い」のためだった。 神は許さない。 罪を犯したからだ。 それはもう決まっている。 だから王は神を恐れる。 そして神を恐れるからこそ、聖者を恐れている。 だが、「救い」だと? 神が与えられぬものを聖者が与えると? 聖者は神を超えない。 なのに何故? 救いとは? 王は聖者を疎み、でも聖者のそれに縋りついてもいるのだ。 「狂人ですよ」 兵士は断じた。 そして、地下牢への鍵を開けた。 それは石の戸で塞がれた地下への穴だった。 粗末な階段が続いている。 「滑ります、きをつけて」 細いサロメの手を取り兵士は地下へとサロメを導いた。 サロメはまるで結婚式へ向かう花嫁のように地下牢へと向かった

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