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第8話

地下牢はその昔その中に罪人を落とし込み獣に食わせた穴を利用して作られていた。 見世物として食べられる罪人を外からのぞきこめる大きな穴。 今は昔はなかった天井代わりに鉄の巨大な格子が穴を塞ぐようにはめ込まれている。 そこに聖者は1人閉じ込められていた。 サロメが通ってきた道は獣の世話をする者達の通る道だったのだ。 天井は鉄格子だけ。 つまり陽も雨も吹きさらしだ。 雨の少ない土地と言え、酷い環境だ。 苦しめるためにそこに聖者は入れられていた。 王らしいやり方だった。 殺すのは恐ろしいが、苦しめたい気持ちは抑えない。 サロメと兵士の前にも鉄格子の扉がある。 獣が餌をやる者に襲いかからないためのものだ。 格子越しに広い牢が見回せた。 広い牢の中に1人の男が立っているのが見えた。 上から鉄格子越しに注ぎ込む月の光を浴びながら。 月の光が男を照らす。 サロメは繋いだ手を振り切り、鉄格子の扉に飛びついた。 中のその人から目を離せないまま。 扉は開かない。 「無理ですよ。ここの鍵を持っているのは王だけ。我々兵士が来れるのはここまでです」 兵士が扉を開けようと細い腕で無駄な足掻きをするサロメに冷たい声で言う。 「ひと目でいいから会いたいっていったじゃないですか。そら、見たでしょう」 いらつきを隠せない。 今夜は酷く抱いてしまうかもしれない、そう思いながら。 「歓喜の時だ。全ての罪人達よ、喜べ。救いは全ての者に開かれる。その方が来た時に。 世界は変わる!!」 美しい声が語る。 深く透き通る声。 荒野の風のような声。 サロメはその人から目を離せない。 ああ、やはり美しい。 こんな美しい人はいない。 月の光がこんなにも似合う人などいない。 声で奥まで感じた。 その姿を見るだけで、激しい飢餓が沸き起こる。 流れる黒い髪は足まである。 聖者は剃刀を当てないから。 恐らく普段は編み束ねられていただろうが今は解き放たれている。 閉じ込められ洗うことも梳かすこともないだろうに、それは月の光と同じように流れていた。 荒野に焼かれた肌は汚れていて、それでも美しく。 やつれた顔は月がつくる影に彩られ、浮かびあがる。 腰に粗末な布だけを巻いたその肢体は、無駄な肉など1つもなく、完璧な自然物のように美しかった。 その目。 その人の目。 月明かりのようにほのかなのに闇よりも黒い。 「 !!」 サロメは叫んだ。 聖者の名前は憚られる。 口に出される時は声をひそめて呼ばれ、普段は呼び名で呼ばれるその名前を声の限りに叫んだ。 鉄格子を握りしめて。 その姿に目を離せないまま、叫んだ。 それは求める声で。 「入れてほしい」と泣き叫ぶあの時の声で。 兵士はギリギリと歯噛みした。 「救われるのだ。罪人達よ。歓喜せよ。その方を待て。そしてその方を讃えよ」 サロメの声など聞こえないように、聖者は語り続ける。 まるでその声が地下牢の天井を抜け、王や后、国中の罪人達に届くと信じているかのように。 いや、届くのだろう。 王はこの数日気分がすぐれない まるで聖者の声が宮殿の奥まで届くかのように。 サロメを無視して語り続ける。 「お前達は救われる。だから悔い改めるのだ」 その美しい声にサロメはとうとう自ら服をはだけて、尖った乳首を露にする。 白い肌。 尖った淡い乳首はいやらしく。 美しい上半身を聖者の前に晒す。 「ああ、美しい人・・・私をだいて欲しい・・・この胸をその美しい唇で吸って・・・その髪で私を包み込んで・・・」 サロメは狂ったようにねがった。 それはベッドで「お願い・・・お願い、もう出させて」とねだった姿そのもので、背後で兵士は嫉妬と劣情に苦しむ。 サロメは全ての服を脱ぎ捨てた。 どんな女よりも美しく、だれもが虜になるとされたその美しさをあますことなく見せつける。 人を狂わす美しさがある事をサロメは知っていた。 それをよろこんだことはなかったが、今の自分にはそれしかない。 恋に狂ったサロメは美しかった。 発情し、匂う肌は白く光り、唇も乳首も性器も、そして聖者からは見えない後ろの穴さえも、求めていた。 唸り声をあげたのは、兵士だった。 耐えていた。 必死で。 あまりにも淫らで美しかった。 「私を見て!!」 サロメは懇願した。 見つめくれたならつたわるはず。 こんなに愛していることを。 「夫を殺した男を選んだ女の息子、お前も罪をおかすのか」 聖者はサロメを見ることなく言った。 そう、サロメの方を見てたが、その目はサロメを通り過ぎていた。 サロメはこんにも欲情に濡れきって甘く匂っているのに、それを気にも止めない。 「何故私を見てくれない。その髪で私を包んで、私をその腕で抱いて。私の乳首をその唇で食べて欲しい。そして、私の中にお前を入れてほしい。私をお前で満たして欲しい」 サロメは懇願した。 ボタボタととはち切れるほどに勃った性器が濡れる。 胸の乳首を自分で摘み、鉄格子の向こうの男に焦がれる。 「お前はこの国のどんな淫婦よりも卑しい。これからは娼婦でさえ、悔い改めたら許されるというのにお前は汚い欲望に身を落としている」 聖者の声は淡々としていた。 「キスして、お願いキスして!!」 サロメはくるったように叫ぶ。、 その美しい声の出る唇で塞がれたかった。 その唇でしゃぶられたかった。 耐えられなくてサロメは鉄格子に身体を擦り付けたまま、自分のモノをしごき始める。 穴に指さえ入れていた。 「傍にきて、私に触れて・・・私を見て、私を抱いて・・・」 サロメは腰を揺らしながら叫ぶ。 「憐れな王子。惨めな王子。お前が私に触れることはない」 淡々と聖者はサロメに告げると、サロメを無視して冷たい床に寝転がる。 「お前が欲しい・・・ほしい・・・私はこんなのじゃ無かった・・・お前がこうした、お前のせいなのに・・・」 サロメは怨む。 何も望まず、周りのいわれるがまま。 信心深く、王に抱かれるくらいなら、僧院に入ることを願っていた。 清らかな王子だったのに。 聖者をひと目みてからおかしくなった。 サロメは泣きならそれでも抱いて欲しいと懇願し、前を扱いて後ろをいじり、とうとう鉄格子の前で射精した。 精液は牢の中へと飛び散った。 カクンと崩れ落ちそうになったサロメを支えたのは兵士で。 でも兵士ももう狂っていた。

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