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第14話

王が会いたがっている。 サロメにそう兵士が伝えにきた。 月に何度かは繰り返される茶番だ。 監禁に飽きたか? そろそろ自分のモノになるか? と聞いているのだ。 聖者の批判を恐れてこのところ少なくなっていたが、聖者を捕らえた今、もう批判する者もいない。 王はサロメを慰みものにするつもりだ。 殺した兄の妻だけでは飽き足らず、その息子までも。 監禁したくらいで、サロメの意志は変わらないはずだった。 サロメはずっと「僧院」に送られることを願ってきたのだから。 だが、男とすることを覚えた今、僧院もサロメには無理だろうが。 だが、あの王の慰みものには・・・。 ありえない。 兵士はそうおもっていた。 サロメは王を拒否する 誰もが思っていたし、王もそう思っていた。 いずれ、王の狂気がもう1つ進んで無理やりサロメを手に入れようとするだろうが。 兵士もそう思ってた。 だが、もうしばらくは。 大丈夫だと。 明日の宴に来るように、との王の命令を兵士は伝えにきた。 それは遠回しに王に抱かれることを意味していた。 歩いて、自分で、望んで、抱かれろ、と。 サロメは断るはずだ。 死んだ父王の喪に服しているといういつもの理由で。 だが、サロメは意外なことを言った。 「王に宴に向かうと伝えてくれ。父の喪に服してちょうど3年。喪を終えて進むことにした、と」 サロメは淡々と言った。 「意味が分かっているんですか!!」 兵士は思わず怒鳴った。 「宴に出るだけだ。母上にも長くお会いしてない」 サロメは無表情に言った。 この塔に押し込められるまで、執拗に王はサロメを追いかけまわし、母親はそれを苦々しく見ていた。 母親は、息子を助けようとはしない。 息子に嫉妬はしても。 そんな母がサロメに 会いたいわけもない。 それは誰もが知っている。 王と王妃の悪徳。 それを拒否する美しく清らかな王子サロメを民は案じてきたのに。 「それで済むと・・・」 兵士は怒る。 塔から出されて宮殿に囲われたなら、兵士ではサロメに2度と会えない。 連れ去ることなど不可能だ。 何より自分のサロメが、王に汚されるなんて認められなかった。 「お前には関係ないことだ」 サロメは言った。 当たり前のように。 むしろ不思議そうに。 兵士の顔に血の色が差す。 分かってはいた。 だが、言葉にされると許せなかった。

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