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第16話

サロメは王の宴に向かう。 昨日の激しい行為に身体は弱っていたが、それでもサロメは向かうと決めていた。 むしろ、これで良かったと思っていた。 欲しいのは1つ。 1つだけ。 もうサロメは決めていた。 王がサロメに贈ってきた服はとても王子が纏うようなものではなく、寵姫が着るような、まるで女性が纏うようなモノで、前ならば侮辱に震えただろうそれをサロメは大人しく着た。 着る手伝いに兵士を使った。 震えていたのは兵士の方だ。 あんなにしても、サロメは行くという。 兵士に犯された痕をつけたまま。 何故。 そう思う。 王を嫌ってこの塔に幽閉されたのではないか? 寒さをしのぐ毛布1枚を手に入れるのに、下賎のものに頼まなこければならない生活に。 食事も何もかもを自分でしなければならない生活に。 でも、それでもサロメは構わなかったではないか。 一介の僧侶として扱われるここより扱いは悪くなる僧院に入ることを願ってきたのではないか。 サロメの気が変わったのは間違いなく、あの聖者のせいだ。 だか、王と会って抱かれることになったところで、聖者をサロメが手に入れることなどできない。 サロメに聖者を王は渡しはしない。 なのに何故? 兵士にはわからない。 ただ、サロメが抱かれる時にサロメを抱いた誰かがいたことがわかり、それが自分だとバレることは確実で。 でも。 そんなことはどうでも良かった。 王にサロメを渡したくはなかった。 美しい女のような衣装をつけたサロメ。 美しくて。 憎くて。 手放したくない。 首に手をかけ締めようとした。 でも出来なかった。 「愛しています」 兵士はサロメを抱きしめて叫ぶ。 可哀想で可愛い。 どこか壊れたこの王子のためなら何でもしてやれるというのに。 「私もお前も。何も知らない相手を欲しがるだけだ。何故?我が身を破滅に導いても、何故私もお前も欲しがるんだろうな」 サロメの言葉に兵士も思う。 何故。 何故こんなにも? 美しいから? でも。 それだけでこんなことに? 人を破滅に導く美しさ。 それだけでは説明できなかった。 「そんなことはでも、もうどうでもいい」 サロメの言葉は兵士にとっても同じで。 行き着くしかないともう分かっていた。

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