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第3話(前編)

サロメは迷わなかった。 せめて一目あの人を近くで見たかった。 だが、自身も捕らえているようなもの。 簡単にはいかない。 サロメには何のチカラもない。 あるのはその美しさだけ。 だからそれを利用した。 数日後、 サロメは幽閉されているに等しい塔から降りていく。 サロメが自分から降りて望まないかぎり、食料も何も与えられないようになっている。 王子であるのにサロメは一人台所で自ら食事をつくり、身に纏うものを洗濯場で洗い、湯を沸かし、浴室で自分で身体を洗う。 数年前死んだ乳母が泣きながらそれらを教えてくれた。 乳母は自分がいなくなったらもう、だれもサロメに仕える者はないと知っていたからだ。 サロメが身分に相応しい暮らしを取り戻すためには、王の望みをうけいれなければならない。 王のベッドにはいるのだ。 母親のように。 それはサロメには出来なかった。 絶対に。 だからこの暮らしを受け入れている。 王がサロメを忘れ去ることを願って。 月に1度、王はサロメの意志を確かめにきて、サロメに卑猥な言葉を囁き、拒絶されて怒って去っていく。 母親と共に来ることもある。 そんな半幽閉生活。 サロメは塔を降りて、自ら扉を開ける。 そこには番人である兵士が常にいる。 食料や必要なものはそこにいる兵士にたのむしかない。 そうさせることで王は自分の立場をサロメに思い知らせているのだ。 だが今日たのむのは食料でも、冬のための衣服ではない。 「すまない」 声をかける。 高貴なる王子が一兵士に頼むのだ。 兵士は丁寧に礼をするがひざまづかない。 無礼なのではない。 知らないのだ。 一生会うことのない王族と接することになったのだから。 この若い兵士がサロメを主に朝から夜まで見張っている。 夜はまた違う兵が。 「王子様何が必要ですか?」 兵士の砕けた口調も口のきき方を知らないだけだ。 ニコニコと嬉しそうなのは好意からだ。 憧れにみちた目がサロメを見つめる。 そう、これだ。 好意。 好意。 「頼みがあるんだが・・・」 兵士は決められたことしかサロメの言うことをきけない。 それ以外のことをきくのは命令違反で縛り首になる。 「なんですか?食料?寒くなってきたから毛布ですか?」 兵士が叶えられる頼みなどそれくらい。 だが、それでは足りない。 足りないのだ。 サロメは彼に首を賭けるほどの危険をおかしてもらいたい。 だから 命をかけてもいいだけのものを。 与えなければ。 サロメは静かに纏っていたガウンを落とした。 サロメはなにもその下に着ていなかった。 真っ白な誰にも触れさせたことのない身体をサロメは一介の兵士に差し出そうとしていた。 それしか持っていなかったから。 かまわなかった。 だってあの人に会いたい。 そのためなら。 何だってする。 兵士は目を見開き呆然としてる。 サロメは細い白い指で兵士のベルトを緩め、ズボンの中に 手を入れた。 初めて触れた他人のペニスは熱くて、もうガチガチになっていた。 扱く。 その美しい目で兵士を見つめながら。 兵士は震えていた。 これがどういう意味か分かっていた。 美しい王子は手を出して良いモノではない。 大体王が狙っているのだ。 誰もが知ってる。 手を出すことは死を意味する。 王さえ手を出せずに歯噛みしている甘い果実を齧るなんて。 サロメは真面目な顔で兵士を見上げる。 その必死な目は美しくて。 つたないけれど、懸命な手から伝わるのは、どうやってでも自分に手を出して貰わなければならないという想いだ。 こんなにしてまで。 どうして。 でも、その切なさに兵士は囚われた。 高貴で美しい、でも無力な人が何かを必死で望み、それを手に入れるために自分の身体を差出してくることに。 「下手ですね、そんなんじゃ・・・誘惑になりませんよ」 サロメの手を兵士はそっと押さえた。 サロメの目は涙に溢れた。 美しい目から涙が零れ落ちて白い顎から、甘く淡い乳首へと落ちていく。 「あなたなら、なにもしなくても・・・ただ一言言うだけでいいんですよ」 兵士はサロメの目元から指で泪を拭い、それから胸元に落ちている涙を舌で舐めとった。 サロメは身体をこわばらせた。 舌の感触に怯えて。 「縛り首になりますよ。・・・あなたのためなら。可哀想でなんて可愛い。あなたのモノになりますよ。可愛い・・・オレの王子様」 胸にキスされた。 ビクン。 サロメは小さく身体を慄かせる。 慣れて無さがわかる仕草に兵士は思わず笑った。 「あなたが欲しいのはオレじゃないのは分かりすぎる。 でもいいですよ、王子様」 サロメの顎に指を当て、上を向かせてキスをした。 怖がり唇を引き結ぶサロメの唇を優しく舐めて開かせて、その舌をたっぷり吸った。 その甘さに陶酔しながら。 サロメの甘さに兵士は夢中になった。 この王子は何もかもが甘い。 慣れてないくせに。 誘ってきたくせに怖がっていることが、可愛くてたまらない。 長いキスに息ができなくてむせるサロメに兵士は笑った。 村にもこんな純情な娘はいなかった。 細い身体を抱き上げた。。 扉を開けて塔の中にはいる。 サロメの部屋、王子の部屋とは思えない、兵士の宿より少しはマシなベッドへと。 「あなたがオレを望んでなくても、あなたの初めてはオレだ。それでオレは・・・破滅することにしますよ」 兵士は囁いた。 粗末なベッドにサロメを横たえながら。 「優しくはしますよ、・・・出来るだけ」 兵士は怯えて縮こまったサロメのペニスをゆっくりと扱きはじめた。 怯えた動物のようにサロメは悲鳴を上げた。 「可愛くて綺麗で可哀想な・・・オレの王子様・・・」 兵士は囁いた。

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