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第八話「Scaredy Cat」
「将平、まだ家決まらん?」
クリスマスと正月を超え、店も少し落ち着いてきたある日、裕二がふと将平に尋ねた。将平は、少し変な顔で裕二を見たあと、目玉焼きを口に入れて答えた。
「……難しいね。会社に近くて、通勤ラッシュでも大通りに出やすくて、駅にも近い家ってやっぱりなかなかなくて」
確かに、そもそも駅の少ないこの街で、そんな好条件の家はなかなか見つからないだろう。車がないとコンビニにも行けないような場所なのだ。
「……ここは本当に優良物件なんだよ。この田舎町で珍しく、車がなくても会社に行きやすいし、駅にも近いし…………毎日裕二さんのえっちな姿が見られるし」
裕二が味噌汁を詰まらせる。将平が心配そうに背をさすった。
「毎、日やないし……っ」
「結局ほぼ毎日でしょ? ……まあ、最近はしてなかったけど」
クリスマス、お正月近辺は、このケーキ屋にとっては稼ぎ時だ。一斉に帰省してくる子どもたちに、ケーキを食べさせたいという老夫婦たちが後を絶たない。夜は遅くまで仕込みをして、朝はいつもより早く仕事に出かけてしまうので、最近はご無沙汰であった。
やっと落ち着いてきた次の休日。不幸なことに、将平の勤務は休みだった。
「…………そんな顔しないでよ、どうしたらいいか分からなくなっちゃう」
将平が困ったように笑った。そんな顔って、自分は一体どんな顔をしているのだろう。
「……裕二さんはさ、気持ちいいことがよほど好きなんだね」
「お前っ、将平……!」
「からかってるんじゃないよ。でも、だから彼女とうまくいかなかったんだなって。裕二さんがずっと未婚なのはおかしいと思ってたんだ」
裕二は口をつぐんだ。かつて彼女に、身体にしか興味がないの? と言われ振られたことは、実際何度もある。
「…………愛してるから抱きたいのにね?」
将平は上目遣いで裕二を見て、クスクス笑う。裕二はふっと目をそらし、ごちそうさまと手を合わせた。
「……裕二さん、決めさせてあげる」
将平が、にやにやと裕二に声をかけた。裕二は茶碗を水に浸してから、振り返らずにその場に静止した。
「…………いつからしたい?」
裕二はごくりとつばを飲み下した。ゆっくりと振り返って、ぎゅっとズボンを握りこんだ。
「……い、ま」
将平が、悪い顔をして微笑んだ。
「裕二さん、大丈夫そう? 何か手伝おうか?」
「……よか、大丈夫」
風呂から出てきた裕二は、ゆっくりと将平の前に座った。その前にトイレから出てきたときも、恥ずかしそうにしつつ、思っていたよりは平然としていた。
全く、浣腸にも慣れてきてしまって。将平は心の中でほくそ笑む。どんな気持ちで彼は準備をしたのだろう。
「……将平?」
「…………裕二さん、ホントに今からでいいの?」
裕二が頷く。将平はゆっくりと、彼に手を伸ばした。
そろそろと、触れるか触れないかの距離で、将平の指が肌を滑る。裕二はぴくぴくと小さくはねた。性感帯とは言えない場所を執拗に撫でられると、だんだんと、焦れったいような、なんとも言いがたい気持ちになってくる。
「将、平……?」
しばらくして、将平の様子がどこか変だと勘付いた裕二は、恐る恐る彼の名前を呼んだ。
「なに?」
「今日、ゆっくりやね……?」
「そうかな」
将平がはぐらかした。絶対に何かするつもりだ。裕二は少し嫌な予感がした。
将平が首元に顔を埋め、すんと鼻を鳴らす。将平の髪がふわふわと首に擦れた。
「……はぁ、いい匂い」
「……っ、将平、それこしょばい」
「裕二さん、ホントにケーキの匂いがする。甘い匂い。……それだけケーキに向き合ってるんだね」
「…………っ、……ん、将平、こしょばいって……」
首元に顔を埋めていた将平が、顔を少し上げて、ゆっくりと耳にキスを落とす。ぴくりと肩が跳ねた。
「……将、平? 触らんと?」
「せっかくこんなに時間があるのに、すぐ終わったらもったいないでしょ?」
将平は裕二の耳を食む。ゾワゾワと、頭が弱く痺れるような快感が裕二を襲った。
「将平、っ、……ん、……ん……ン……」
「裕二さん、まだ俺口にキスもしてないんだから」
将平がするりと太ももを撫でる。裕二の性器は、すでに緩く芯を持っていた。
「……期待しちゃったんだね。それとも、久しぶりだからかな」
「……うる、さか……っ。お前、なんで今日はそんな、ゆっくり……」
「気分だから」
将平ははっきりとした声音でそう言った。そう言われても、久しぶりだというのに。裕二は頭の中がぼうっとしてきた。
「…………口、開けて」
「……ん、は……、ぅん……」
将平は、裕二を堪能するように深くキスをする。ぴくぴくと身体が勝手に反応する。
将平が、ちらりと裕二の瞳を見て、彼の胸に手を出した。
「……んっ、将平……っ」
「胸気持ちよくなってきたでしょ? 結構毎日頑張ったもんね」
「…………ぁ、ん……、ん゙……ッ」
将平が胸に手を触れると、勝手に声が漏れる。性器を刺激されたり、後ろに挿れられるのとはまた違う、弱くジリジリと追い詰められていくような快感が、裕二を襲った。
「将、平……っ」
「うん?」
将平は楽しそうに返事をする。ゆらゆら揺らめく裕二の瞳は、甘い色を持っていた。
「……下ば、触って」
「……下?」
するすると、腹に将平の手が滑る。へその下をぐっと押されたり、鼠径部を撫でられると、ゾワゾワと身体が震えた。
「……っは、違、将平……!」
「違う? 裕二さんが言いたいこと、俺わかんないな」
裕二がむっとして、将平の手を掴む。
「……言葉に出して」
将平は、つかまれた腕を無理やり持ち上げて、裕二の手にキスをした。
「なん、ば……っ」
「裕二さんの口から出るえっちな言葉が俺は大好きなんだ」
将平は意地悪く笑いながら、裕二の指にキスをする。そのまま、裕二の指に将平の舌が滑った。ざりざりと、厚い舌が指の間に滑り込んだり、関節をなぞったりする。
言わされるのか? 今、ここで? もし恥ずかしいことを言ったら、もし彼が予想しているよりも、淫らなことを言ってしまったらどうしよう。裕二の心臓は、バクバクと、破裂しそうなくらい鳴っていた。
「……裕二さん?」
裕二はこくりとつばを飲み込んだ。
「……っ、将平、ちんこ、触って……っ」
将平はそれでも手を出さない。裕二が、もたもたしながらズボンと下着をおろした。
「はー……っ、は……っ、しょう、へ……。お願い、触って、ほし……っ」
勃起した性器を丸出しにして、将平の腕をぎゅっと握る。将平は、足の付け根に手を這わせ、するりと弧を描くように性器の周りを撫でた。裕二が、思わずたじろぐ。
「先走りでぐしゃぐしゃだね。そんなに触ってほしかったんだ」
「だって、将平が、焦らすけん……っ」
「焦らされてるって感じたの? じゃあずっと触ってほしかったんだ」
ぴくぴく身体が跳ねる。将平は、内腿をするりと指でなぞった。
「俺まだ乳首しかさわってなかったのに、裕二さん、乳首だけでこんなに気持ちよくなれちゃう人なんだね。……それとも、これからの妄想だけでこうなれちゃうの?」
「……っ、どっちでもなか! やめろさ、将平、そやんか事言わんで……っ」
「触ってないのにどんどんおっきくなっちゃうね」
裕二が顔を真っ赤にして目を伏せた。
「意地悪言わんで、恥ずかしかやろうが……っ」
将平は、そっと彼の身体に手を触れた。
「恥ずかしいことしてるんだもん。裕二さんの今の状況、すごくはしたないって気づいてる?」
「……そい……っ、そん意地悪言うの、やめてさ……っ」
「…………ふ、裕二さんって恥ずかしいのも好きなんだね」
裕二は顔を赤くして目をそらす。恥ずかしいのが特別好きだという自覚はさらさらなかったが、ここまで顕著に主張されては認めざるを得ない。
「……かわいいな、こんな風にいじめたことなかったから、知らなかった」
将平は再び裕二の首元に顔を埋めて、左手でゆっくり頭をなでた。
「っ、は、……っは、……ぅ」
「……ねえ、裕二さんって、いつもすぐイッちゃうでしょ? すぐイッちゃうから、俺がイくまで連続イキしちゃう。それ、怖くない?」
裕二はゆっくり頷いた。気持ちがいいことにも、限度がある。度が過ぎて、身体がおかしくなる気がして、怖くなる。
将平が、にこっと笑った。
「早漏トレーニングしようよ」
彼が善意だけでこう言うはずがない。そんなことは分かっていたが、裕二は大人しく頷いた。将平がにやりと笑う。
「……じゃあ、今から俺の言う通りにしてくれる?」
裕二は再び頷く。将平が、嬉しそうに棚から消毒液の類と、袋を引っ張り出してきた。裕二はゾッとして目をそらす。袋の中から、ピンクや紫、黒などの色をした棒がいくつも引っぱりだされた。
「…………これ、裕二さんが大好きなおもちゃ」
「好かんて言いよるやろ!」
「はいはい、気持ちよすぎて嫌いなんだったね」
将平は、取り出した道具を除菌シートで拭きあげながら並べていく。
「……このバイブとエネマグラは使ったことあるよね。あと、このディルドも、俺がいない間に勝手に使ってたのを知ってる」
裕二がびくりと飛び跳ねた。
「っ、お前、知って……!?」
「ふふ、裕二さん、お尻がそんなに気に入った? 前まではあんなに嫌だって言ってたのに、俺が買ってたのを勝手に使っちゃうくらいよくなっちゃったんだ?」
「ご、めん、将平……っ」
「いいよ、一応ちゃんと清潔にしてあったから。でも危ないこともあるんだから、勝手には使わないでね」
将平はニヤニヤ笑いながら道具を並べる。先日、裕二があの袋を開いたときにはなかった道具もある。
「こんなものかな」
将平は道具を満足気に眺めてから、裕二を見上げた。
「…………何させられるか分かる?」
「……分かるわけ、なかやん」
「多分だけどね、裕二さんは好きだよ」
変態だし、と言ってから、将平は柔らかく微笑んだ。
「ここで、俺の言う通りにオナニーしてほしい」
裕二が慌てて首を振った。
「い、やだ……! 無理、しきらん!」
「おねがい、裕二さん」
将平が、ゆっくりと距離を詰めてくる。
「……見られるの、嫌いじゃないでしょ?」
将平が耳元で囁いた。
「あ゙、ぅ……っ、う」
「意外だったな。すぐイッちゃうと思ってた」
床に、使用されたアダルトグッズが転がっている。裕二は、自分の体内で暴れ回るローターに手を焼いていた。
「あ゙ぁ、あ゙……っ、ぅ……」
「涙出てる。大丈夫? 頑張れて偉いね」
「ッ、将平……ッ、……ン……ッ、ん、んぁ゙……ん……」
「……シーツビシャビシャだね。まだ一回もイってないのに」
将平はくつくつ笑った。
裕二は、はじめ、将平の目の前で、手で自慰をしてほしいと頼まれた。早漏トレーニングと称しているのだから、まあ仕方ないと将平の頼みをきいた裕二に、イきそうになったら教えてと、彼は笑った。それを素直に実行したら、あろうことか、将平は射精寸前で裕二の手を捻り上げた。いわゆる射精管理だ。二度目に寸止めを食らったとき、裕二は、これはまともではないと、頼みをきいたことを早くも後悔した。
それから、何度も嫌だと拒否したエネマグラで一度、バイブを入れられて一度、合計二度射精を寸前で止められ、今、腹にあるのがローターだ。
「ゔ、ぁ゙、あ゙ぁ……っ」
なによりこのローター。刺激は小さいくせに、じわじわと快感を煽る。何度も絶頂しかけた身体が、単調で小さな刺激を感じて、ずっと気持ちがいい。
「……ぁあ゙……っ、ぅ……ん、ンン……、ぅ」
「裕二さんは、こういう振動より、ごりごり押されるのが好き?」
「っは、ぅ……っ、押さるっほうが、は、ぁ、……イくの、楽か……」
「……へえ、そう」
そう、こんな緩やかな刺激より、押されるほうがよほど良い。これでは、地獄のようなものだ。前立腺を、ぐっと押し込まれれば、今簡単に達せそうなのに。
裕二は、目の前の将平の身体をまじまじ眺めた。将平の性器は既に緩く主張している。
そうだ、アレを挿れられたら、どんなに気持ちがいいだろう。気持ちのいいところを、ごりごりと押されて、それで、玩具じゃ届かないような、腹の奥を突かれれば……。
「……裕二さん?」
将平と目が合う。裕二はドッと羞恥心がこみ上げた。自分は、いま、なにを……。
けれど、けれども、将平の性器で腹の奥を突かれたら、きっと――。
「っは、ぅ、う……ッ、は、あ゙ッ……ぁ……ッ」
ローターが、前立腺を押しながら振動している。ぶるぶると寒気にも似た感覚が押し寄せた。息が切れる。将平の目が、こちらをじっと見ている。
「あ゙……、イ゙……ッ! イきそう、しょうへ……、イきそ……っ、イき、だい゙、イぎたい……ッ!!」
「駄目だよ、まだ駄目」
五度目の射精感に、流石に頭がクラクラした。駄目だと言われても、刺激があるのだから我慢など無理がある。
「あ゙、むい゙……っ、しょうへ、イぐ、イぐ……ッ!」
いよいよ射精しそうになったとき、将平にローターを引き抜かれた。目の前がチカチカして、視界が歪んだ。
裕二は将平の身体に持たれこむと、物足りなさそうにびくびくと跳ねる身体をよじらせた。息が荒く、目から涙が溢れている。
「しょう、へい……っ」
「うん? なに?」
「……もうイきたい……ッ、イきたい……」
「まだ駄目だよ、早漏治したいでしょ?」
裕二の性器は、少しでも触れば精液が溢れてしまいそうだ。裕二は肩で息をしながら、将平の肩を強く握った。
「……はぁ、……はー……」
「ちょっと落ち着いた?」
「……っ、将平、ホントにもう……っ」
「もう無理? イッちゃいたい?」
裕二は頷く。いじめ過ぎも趣味ではない。将平はちらりと手持ちのアダルトグッズを眺めた。
「…………じゃあ、ひとつ、どうしても見たいのがあるんだけど」
将平の目が、ゆっくりと細められ、裕二はこくりと喉を鳴らした。
「お前、趣味、悪かさ……ッ」
「そう? 俺結構好きなんだけどな」
将平が選んだのは、よりにもよって固定ディルドだった。床に固定して使えるディルドで、ひとりでも騎乗位気分が楽しめるアレだ。
変態の言うことなど聞くべきじゃないと、裕二は再び後悔した。けれど、将平のわがままなら、聞いてやりたくなるのだから仕方がない。
「……っ、変態が」
「裕二さんもね」
将平は裕二の胸元を指先で撫でながら、くつくつ笑った。
「跨って。ゆっくりでいいから」
「っ、将平……」
「なに?」
将平が首を傾げる。裕二は、そろそろと目を逸らした。
「……俺 、こい多分……無理……」
「どうして?」
将平が尋ねる。裕二は顔を真っ赤に染めて、バツが悪そうに口を開いた。
「………前、ディルド、使った……とき、気持ちよく、なかったけん……」
「……それ多分、裕二さん我慢できなくてディルドいきなり挿れたでしょ」
将平の言葉に、裕二が更に赤くなった顔を腕で隠した。
「…………我慢も必要なんだよ、裕二さん」
「分かっ、とるし……我慢できんかったわけじゃ、なか、し……」
「……ふ、ふふ、でも今日はよく我慢してるよね」
将平は裕二の頭を優しく撫でた。将平の手のひらで頭を撫でられるのが、とても心地良い。
「頑張って。我慢はこれで最後にしてあげる」
裕二はおとなしく頷いた。
ピンと上を向いたディルドに乗っかり、その先端を後孔に押し当てる。ゆっくりと押し進めると、思っていたよりはするすると奥へ入った。
「……っ、ン…………っ」
「裕二さんって結構身体柔らかいんだね。大丈夫そう?」
ただならぬ圧迫感を感じながらも、ディルドはなんとか最奥まで入りきる。既に、びくびくと身体が震えていた。
将平が、裕二の腕を前に並べ、膝を立たせる。しゃがみこむような形で、裕二は腰を振った。
「……は、ぅ゙……、ンン……」
「……ふふ、そうしてると犬みたい」
将平が、ニヤッと笑った。
この変態は、一体どういう十数年を送ってきたのだろう。すぐにその体制はつらくなり、裕二は床にぺたんと座り込んだ。
「……っ、ふ、ん……ンン、ン、ん……」
「……イイところを擦るように動いて。ほら、あるでしょ、気持ちいいところ。そこをごりごりするみたいに」
「ぁ、……っ、ん、あ゙、……っん、っゔ」
「やっぱりいいな、固定型。騎乗位を傍から見てるみたい」
下手くそなのがいいよね、と将平が笑う。裕二は腰をめいいっぱい振り、抜き差しを繰り返した。腰が振られるたび、性器が揺れてカウパー液を撒き散らす。将平は床に落ちた液体をティッシュで拭ってニヤニヤ笑った。
「我慢汁撒き散らしてオナニーして、気持ちいいね?」
「あ゙、将平……ッ、しょう、へ……っ」
将平が、裕二の腰にすっと指を滑らせる。ゾッと腰が痺れて、快感が湧き上がった。
「出したいね。びゅーって、ほら、気持ちよくなりたいもんね。……ふ、ビクビクしてる。もうちんこはちきれちゃいそうだね」
「ぁ゙ぅ、しょう、へ……っ、ぁ、あ、あ、あ……。……んぁ、あ、……あ゙……っ! イ……ッ、イぐ、イぐ、出る、出る……っ」
射精しそうになり、将平が止めるより前に、裕二が固定ディルドを抜いて床にへたりこんだ。荒く息を吐く。やっと終わる。やっと開放される。裕二はびくびくと跳ねる身体をなんとか落ち着かせようとした。
しかし、次の瞬間、将平が、突然裕二を押し倒した。裕二がまだ力を入れられないでいるうちに、将平は余っていたディルドを挿入してしまう。
「あ゙ぁあ……っ!? お゙、わった、しょうへい、も、おわっ、たぁ゙……!!」
「やめたら駄目だよ。俺いいって言ってないのに」
「イぐ、イくけん、離しで、もうだめ、イぐ、イクイクイク……っ、しょうへい、しょうへ……ッ!」
「イったらだめ。我慢して。目的忘れちゃった? 射精しにくくなりたいんでしょ?」
泣き喚く裕二に、将平はゾクゾクした。自分がどんどんだめな方向にエスカレートしていっているのがわかる。けれども、止められるほど、20年は軽くない。
将平はぎゅっと裕二の性器を強く掴んだまま、ディルドを抜き差しした。
「ほら、このディルド、裕二さんがさっき、気持ちよくなれなかったって言ってたやつだよ。勝手に使っちゃうくらい気になってたんでしょ? どう? きもちい?」
「あ゙ぁああ、きもちい、イ゙ぐ、イぐぅ゙……っ! イかせて、イかせで……! いぁだ、しょうちゃん、しょうちゃん……っ」
そろそろ限界だろう。将平は、裕二の耳元で囁く。
「……イきたい?」
「イきたい、いぎたい……っ」
将平は、裕二の耳に優しくキスをした。
「…………頑張ったね。いいよ、イッて」
性器から手を離し、ディルドを腹をえぐる様に奥へ挿入すると、裕二の足がピンと伸びて、背が仰け反った。
「……は……ッ! あ゙、あ゙…………ッ、あ゙ぁ……、あ………!!」
びゅくと白濁液が飛び出す。締められて動かせなくなるまで、将平はディルドを緩く動かし続けた。大きく開いた足がガクガク痙攣している。将平は、身体がぞくぞくと、これまでにないくらい興奮しているのが分かった。
「……ぁ゙、あ、気持ちいの、止まらん……っ、……きもちい……っ、将平、将平……っ」
「……裕二さん、大丈夫? まだビクビクしてるね」
「ナカ、入っとるだけで、今、……っは、勝手に、ナカが、ギュってす……」
「…………動かしてもいい?」
「い、いかん! いかん……!」
裕二が本気で抵抗する。将平がクスクス笑った。
「ごめんね、やらないよ。疲れたでしょ?」
将平がディルドをゆっくりと引き抜いた。裕二は、自分のナカが拡がっているのが自分でわかった。
将平はゆらりと立ち上がる。勃起していたため、正直立ちたくはなかったが、裕二の身体を拭く濡れタオルを取りに行く必要があった。
「…………将、平」
「なに?」
呼び止められ、将平はすぐに振り返る。裕二の筋肉質な身体が白濁液に侵されている光景は目に毒だった。
「……裕二さん?」
「…………挿れ、て、みらん?」
「は…………」
裕二は、足を開き、自分の尻を手で広げた。引き締まった太ももの間に、まだヒクヒクと動く蕾が見える。
「ナカ、ビクビクしとる、けん……、今、挿れたら、気持ちよかはず……、将平も」
「…………な、んで、そういうこと言うのかな、裕二さんは……っ!」
将平は裕二の身体を思い切り押し倒した。抑えなきゃいけない、分かっている。それなのに、手つきが荒くなる。
将平は自分の性器を、裕二の後孔に押し当て、すぐに挿入した。
「あ゙……っ、あ、ぁ……っ」
裕二の腸の内壁は、やはりまだびくびくとしている。将平はディルドが入っていた場所まで、自分の性器を押し挿れた。
「ゴムつけてない、ごめんね、あとでちゃんと、俺が処理するから……っ」
「は、ぁ゙……、よか、そのまま……、あ゙……っ。っ、将平の……、腹の、きつか……っ。おもちゃと、ぜんぜん違う……」
「……裕二さん、奥……、奥まで挿れていい?」
裕二が、将平の首に手をかける。そのまま、くいと彼の頭を引き寄せた。将平は、ゆっくり何度か腰を打ち付けるようにして、最奥まで性器を挿入した。
「……ごめんね、あんまり上手にできないかもしれない。裕二さんが、かわいいから……。俺もうどうにかなっちゃいそう」
「……ぁ、いい、いいけん、早よ、動け、将平……っ。今、もう、挿れてるだけで、イきそう、やけん……っ」
将平はゆっくり律動を始めた。裕二の指が、緩く将平の背中をひっかく。
「あ、……ぁ、……あ、ンッ、…………は、あ゙……ッ」
「大丈夫? 裕二さん、無理してない?」
「大丈夫、大丈夫やけん、もっと、激しゅ、せろ……っ」
将平は、少しずつ律動の速度を早めていく。裕二がぎゅっと将平の身体を抱きしめた。
「ぁ、あ、っ、あ、将平、将平……っ」
「っは……、なに? 痛い?」
裕二が首を振る。蕩けた顔で、裕二は口を開いた。
「将平は……っ、将平、気持ちよか?」
「……。うん、きもちいよ」
裕二が、満足そうに、幸せそうに笑った。将平は、喜びと悲しみの入り混じったような感情がこみ上げてきて、喉の奥がじんとした。
腰が打ち付けられるたび、肌の弾ける音がする。身体の奥が、甘く痺れる。
「あ゙、ぁ…………あ゙ぁ……、きもちい、イぐ、またイく……ッ!」
「うん、きもちいいね、裕二さん……」
「ぁ、あ゙、あぁ……っ、イッちゃう、イッちゃう、イぐ、イグ、イクイクイク……ッ!!」
「……っ、は、……ぅ」
「は、……ぁ、あ……」
裕二の性器が性を吐き出し、ナカがぎゅっと収縮する。将平はぼんやりとした頭で、ほとんど無理矢理抜き差しを続けながら、彼の鎖骨にキスをした。
「きもちい……どうしよう、裕二さん、俺、裕二さんとセックスしてる」
泣きそうな声で、将平が呟く。身体をいいように揺すられているのに、文句の一つも口に出せない。裕二は、優しい手つきで将平の頭をなでた。
「……しょう、ちゃん」
将平は背中がゾクゾクした。裕二の身体を押さえつけ、夢中になって腰を振る。
「……ん゙んッ! ……っぅ、あ゙、ん、あ゙ぁ……ッ」
「裕二さん、かわいい。かわいい。大好き。……俺、俺、裕二さんがホントに大好き……っ」
「……あ゙、ぁ、きもちい、イきそう、またイく……ッ! 将平、しょうちゃん……っ」
「っ、裕二さん……、俺それダメ……っ」
身体がゾクゾクと強く興奮する。裕二はびくんと身体をそらせた。
「ぁ、大きゅ、なっ……っ! あ゙ッ、あ゙ぁッ、イく、イく、イッちゃう、だめ、いかん、あ゙ぁ、またイッちゃう、イッちゃう……ッ!」
「っ、待って、俺もイきそう、裕二さん放して……っ」
将平のそんな言葉を聞き、裕二が腕の力を更に強めた。
「しょうちゃん、イッて、よかよ……、こんまま……っ。しょうちゃんの、しょうちゃんの、俺の、ナカ、に……っ」
将平が、強く腰を打ち付ける。荒々しく腰を振りながら、裕二の首に強く噛み付いた。
「あ゙ぁあ……ッ!? また、噛ん……ッ! だめ、奥、おぐ、ッ! きもちい、奥、おぐ、ぅ゙……っ」
「は、裕二さん、裕二さん……っ」
「ア……ッ、あ゙ぁ、あ、あッ、イく、イく、しょうちゃん、俺、イく、あ゙、あ、しょうちゃんの、しょうちゃんので……、ぁ、あ゙……っ、あ゙、あ゙ぁあッ!!」
裕二のナカが、将平の性器を吸い取るように締まる。将平はびくんと一度身体が小さく跳ねた。びりびりと頭が痺れる。
「……ッ、ぅ……ン……っ」
「あ゙……ッ、あ゙……あ…………っ」
目の裏がチカチカする。腹の中に、温かなものが注がれているのがわかる。ナカが何度もぎゅっと痙攣して、将平のモノを強く感じる。
「……だ、いじょうぶ? 裕二さん」
将平の性器が引き抜かれると、裕二の後孔からとろりと白い白濁液がこぼれた。ゾクゾクと背が震える。ぼんやりと眺めていたら、裕二が、将平の頬を撫でて、ふにゃっと微笑んだ。
「…………将平」
将平は、途端に泣きそうな顔をした。裕二が驚いて将平を凝視する。将平は、裕二の胸に顔を埋め、震える声で言葉を吐いた。
「……裕二さん、俺、ずっとここにいたらだめかな」
将平が顔を上げる。潤んだヘーゼルと目があった。
「……裕二さんが好き。裕二さんと結婚したい」
「……諦めんなぁ、お前も」
上がった息のまま、裕二が笑う。将平は、強い絶望を覚えた。
「…………将平には、もっと美人の女の人が似合うやろ」
裕二が、当然のようにそう言った。
将平が、目を大きく見開いたまま固まる。そのヘーゼルの瞳から、ぽろっと一粒涙がこぼれた。
「…………俺はそんなこときいてない」
将平は裕二の手をぎゅっと握った。
「……お願い、裕二さん、流さないで。…………俺はもう子どもじゃない。それなりの覚悟を持って言ってる」
将平の手は、裕二のものより少し大きく感じた。細長い指が、裕二の手を絡めとる。そのまま、将平はその手を額に寄せた。
「……本気なんだよ、俺はずっと」
裕二は何も言えなかった。将平は、本気なのだと、分かってしまったから。
何度も感じた。彼は本気で、自分が好きなのだと。けれど、そのたびに、言い訳をつけて彼を蔑ろにしてきた。
彼は本気で自分と結婚すると言っている。それならば、自分はどうだ? 彼のこれからの人生を、全て自分に浪費させてしまう、その覚悟があるか? それとも、彼の将来のためにはっきりとした拒否を持つ、その覚悟があるか?
「…………ごめん、将平。……俺、お前とどうしたいのか、よう、分からん……」
将平は少し悲しそうにして、それから笑った。
「……ごめんね、困らせちゃって。今のままで十分なのに……。裕二さんとセックスできたのが嬉しかったから、つい、高望みしちゃった」
将平が、裕二の手をすとんと離した。
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