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第18話 ※R

 姿を見せるなと申したのに、鳥の方より我に目通りに来よった。しばし……いやもう二度と見れぬのかと思うておった鳥の姿に心が湧いた。  皆の前で再び暴言を吐けばその身を罰せねばならぬ。周りの者は全て下がらせ焦する心を落ち着かせ鳥と向かいおうた。 「何用で参った」 「王にお願いがあり参りました」  すっかり落ち着いた様子の鳥は頭を下げ身を低くした。涼しげな面。この間の乱心ぶりが夢の中の出来事のようである。 「なにの願いか?」 「わたくしを王宮より去らせてくださいませ」 「……な、何を言っておる?」 「我の宮を頼りくる童には既に申し伝えております。お許しをいただければ本日にでもここを離れとうございます」  既に身の周りも処しておるとは……鳥の強い意を感じる。しかしこれはあまりにも無謀な望みである。 「……城下に頼るものがおるのか?」 「おりませぬ」 「そなたは自分の事を何もわかっておぬ。そのなりで城下に下りればたちまち拐かされてしまうであろう。再びそなたを狙うやも知れぬ四名の者もおる」  そのような場所におめおめ下がらせるわけにはいかぬ。 「……構いませぬ。そこで息絶えるならそれがわたくしの命運でございます」  鳥は言い放ち、冷ややかな瞳で我を見遣った。  それは……嬲りものになるやも知れぬ。死すかも知れぬ。  それよりも我の側におることが嫌であるということか……?   「……許さぬ! 嬲りものになっても良い。死しても良いというのなら我に囲われるがよい!」  拐かされ狂うたような男達に嬲られる鳥の姿が浮かぶ。身の内よりぶるぶると体が震え思わず立ち上がり目の前の灯台を思い切り足蹴にし鳥に向かい咆哮していた。 「……嫌でございます!」  鳥は怯え、はっきりと我を拒絶すると踵を返し逃げようとした。その姿にますます頭が熱く沸き立ち、その身を捕まえ細き両手を握って引きずると金の籠に放り込んだ。 「そんなに我の元におるのが嫌か? 城下に下りればそなたなど、ひとたまりもなく獣のような男に嬲り殺される。そんな者よりも我の方がおぞましいということか!!」  帯を掴み衣を引き裂いた。 「いけませぬ!」  咄嗟に舌を噛もうとした鳥に気づき指をねじ込んだ。その口より我の血が溢れ滴り落ちる。  本気である。裂けた肉より白い骨が見えた。 「……な……なんということ……」  驚き惚けている鳥の口にくつわをかけ自死せぬようにすると鳥は涙を流し首を振った。 「まさか、禁忌を破ろうとはの……」  会うた時よりどんな惨き目に会おうと頑なに守りし不殺の律。よもやそれを破ろうとは……我に触れられるのは、そこまでのおぞましきか?  怯えて涙を流す鳥の真白な体に触れると我の血がべたりとついた。まるで兎を喰らう獣のような心地。飢え、枯渇し、その身を食いとうて仕方がない。柔らかき白き肉と赤き血の匂いに半身が猛り痛うくらいで収まらぬ。  血の跡を追うように白き肌を啜り、噛みつき青い痣をつけた。  その味のなんという甘露か……。 「こんな物まで白く美しいとはの……」  手の中で固く立ち上がったものを握り込み擦りあげた。 「随分と淫蕩な体であるの。憎き男に嬲られておるのに立ち上がり喜んで蜜を出しておる」  言葉に首を振り、真白き体のそこかしこが朱を帯びる。  どこまで男を狂わすようにできておるのか……。  先の筋に沿うて親指で擦り、胸の赤い実に吸い付き齧り付く。白い体が幾度も痙攣し跳ね上がりとろとろと蜜を溢れさせていた。  言葉を塞がれたまま蕩けた飴のような瞳で我を見遣る。たまらぬ。  我の物だ。このような姿、我以外、誰も見ることは許さぬ。  いや、もうそなたを再び誰の目にも触れさせぬ。  香油を取り後ろに指を入れて突き捏ね回す度に体が跳ね蜜を出した。狭き場所なのにまるで我を引き入れるように収縮し指に纏わりついてくる。  今すぐに我をここに入れこの白き体を思い切り揺さぶり引き裂きたい。凶暴なまでの熱が体中を駆け巡る。下は熱を持ち持ち上がり痛いほど熱く、頭には血が上り、体中から汗が噴き出た。  しかし今はならぬ!  まだ逝って十日も経っておぬ王妃の姿が浮かんだ。  王子等が王となれし者となるまで我は狂う訳にはいかぬ。  ぎりり……と奥歯を噛み首を振り、あまりに強き誘惑を断ち切る。後ろから白い足の間に我の物を差し入れ揺さぶり、鳥のものも共に握り込んだ。  なんという心地良さ。鳥はくごもった悲鳴を上げ痙攣しながら蜜を出し続ける。その沸き立つような甘き香りに眩暈がした。  たまらぬ。もはや何を隠すことができよう……これが我の望み。獣の如き本性である。  鳥の体を幾度も揺さぶり、我の子種を掛けその愉悦に蕩となった。  + ++ + ++ + 「今日よりここで暮らすがよい」  言葉に横たわったままの鳥が我を見遣った。  真白な体には酷いまでに赤黒い痣がいくつも付き、我の血と子種に塗れていた。  取り返しのきかぬ惨きことをしたというのに鳥を我がものにした喜びに身の内が震えておる。  ……非道な鬼で構わぬ。  我はもう決してそなたを誰にも、そなた自身にもやらぬと決めた。 「そなたが食事を取らぬならその数だけそなたの慈しんだ童を崖より投げ捨てる。そなたがここより逃げたり、自死すれば子らは皆殺しとする。望むならともに死すがよい」  言葉に鳥は何も答えず青白い顔のまま寝所の上で頭を下げた。

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