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第20話

 あれから半月あまり王のお体にお変わりは無いようである。  寝屋の中、身を起こし隣で眠られておる王の広い背中を見遣った。  我の中に入らねば御身を狂気に落とすことがないということであろうか……。  この国より偉大な王。王子様達より優しき父上様を奪うことにならずまことに良かった。  あれより毎夜、王はここに通われておる。  王が望むなら……王を狂気に落とさずに済むのなら我を弑そうが、嬲ろうが構わぬ。  むしろ我は幸せでどうして良いのかわかりませぬ。  気まぐれにでも我を求めて下さることが、王の力強い腕に包まれることが嬉しく……王妃様の嘆きも、御身を狂気に落としてしまうかも知れぬ怖も何も考えられなくなってしまうのです……。  ずうずうしくも王妃様のお言葉通りとは思っておらぬが、我が思い通りにならぬことにお怒りであるゆえでも、何ゆえでも構わぬのです。王のお気持ちが冷めるまで少しでも長くこのままでいとうございます。  お休みの邪魔をせぬようそっと温かい背中に寄り添う。  この広き背中のあちこち、お体の至る所に傷痕があられる。  あい間見えるまで一体どのような暮らしをされていらしたのか……赤子の時に王宮を去られ我が王宮でのうのうと暮らしておる間、さぞかし惨き暮らしをされていらしたのであろう。良く生きて戻られました。王となりお子様方もご誕生され姫様もさぞかし喜んでおられることでございましょう。  わたくしはおそばにおっても何もお役には立てぬ身。  呪われた身であれば王の慰めになることも、子を成すことも出来ませぬ。  御身は、またいずれ王妃様を娶られましょう……。  許される限りで構いませぬ……お側にいさせてくださいませ。

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