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第24話 side 金華 ※R

「やはりわたくしよりご奉仕するのはお嫌でございますか?」  眩子様のお心のままにお仕えしとうが、寝屋の中、王は我に何もさせずまるで我の方が眩子様に仕えさせているかの如くでいつも戸惑うてしまう。 「……嫌なわけではない。我は妬いておるのだ」  王がお顔を背けぼそりと呟かれた。 「如何なことにござりますか?」 「そなたに触った者たちの影を見とうない」 「……そのような……」  やはり我の身が穢れておるのがご不快であられるのだ。しかし我はこの醜き身しか持たず、それよりのすべを知らぬ。 「小さき男であるの……」  どうしてよいかわからず顔を伏しておると王は照れたようなお顔で笑みを浮かべ力強く我を抱き寄せて下さった。    我を包む暖かく大きな御身。お会いしてよりずっと我はその尊きお姿を拝しておりました。不正を嫌い。何をもにも惑わされず民においても政においても全てを俯瞰し神の如き公正な采配をなさる。清も濁も飲み込む強き心、広き心でこの広大な国を統治するお姿。常人では成しえぬ生まれながらの王たる資質。  穢れた身、呪われた身であれど、わたくしはどうあっても我の全てをもって眩子様にお仕えしとうございます。  その力強く精悍な頬にそっと触れ唇を重ねた。王は何も言わず我を見ておられる。 非礼であろうか……額に残る傷に……顎の下より胸元まで伸びる大きな傷に……唇を落とす。いかな時、いかな者にこのような惨き痕をつけられたのであろうか……心の臓の上にも深き傷跡を見つけひやりと身が縮む。  辿った多くの傷の先、御手に我のつけた傷がおうた。ほんになんという恐ろしゅうことをしてしまったのであろうか……まだ赤黒い跡が生々しい。思わず口に入れ舐め両手に拝し頬をつけた。 「御身の指を裂いた大罪をお詫び致します」  あの折はなんとしても我が命を断たねばならぬと力の限りで噛んでしもうた。まさか王の御手を引き裂いてしまうとは……。 「わかっておる」  王は笑いながら我の髪を優しく撫で許してくださる。顔を上げ、そのお姿を拝すと我は体中の熱が上がり所在なく、どうあってよいのかわからなくなってしもうのです……。  ……ただ死すことだけを願っていた我の昏き生に王は生きるよすがを与えて下さった。何をもいらぬと思っておった我になんとしてもと欲するものを与えて下さった。  全てが王より賜わる物……日輪の如き王の輝かしいお姿が無くれば我は草葉のように朽ち果ててしまいます。 「今わたくしは王を貶めることなくお仕えできていることに幸せを感じております」  この心持ちをどうお伝えすればよいものか……ただただ拙くも我の心のうちをありのままにお伝えすることしかできぬ。 「好きにするがよい……」  王は寝所に横たわり我に身を委ねて下さった。  香油を手の中で温めその広き胸に塗り広げ、その上より逞しい体を舌で舐める。このような振る舞いがご不快なのであろうか……なれど不完全な身であればせめて……我が手で心地よくなっていただきたいのです……我をひと時でも長うおそばに置きたいと思うていただきたいのです。  王の熱く大きな賜物に両手を添わせ口を付ける。  既に熱くなっていただけていることが嬉しくてならぬ。  香油を塗りたし指で舌で余すところなく摩り、舐めあげた。 「……くっ……」  堪えるような低い声がして手の内の物が一層大きくなる。王の大きな御手が我の髪を掴み心地よいのだと伝えてきよる。反応されたところを幾度も強く吸い上げた。 「どうか楽しまれてくださいませ……」  含み切らぬかと思う大きな賜物を歯で傷つけないようゆっくりと嚥下し、なんとか飲み込んだ。  浅ましくも口の中で心の臓のように熱く脈動している熱き物を身の内に入れとうて堪らぬ。我が呪われた身でなければもっと御身をお慰めすることができたであろうに……。  せめてもと口一杯に頬張ったものを強く吸い上げ上下する。  しばし……勢いよく暖かいものが口の中に放たれた。  一滴をも溢さぬよう先を舐め、口元についた子種も指で取り舐めあげる。 「……嬉しゅうございます」  我の奉仕で喜んで下さったことが嬉しゅうてならぬ。  精悍なお顔。鋼のような体躯。  長くうねる艶やかで豊かな黒髪。黒曜石のような瞳。  何を貶めるゆえがございましょう……我はその美しき姿に幾度も見惚れ、御名の如く眩くて仕方ありませぬ。    その御身が、色香をたたえ獣のように息荒く我を見遣り熱き手で我の手を引き寄せる。  なんという愉悦。幸せな心地であろうか……。

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