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第26話

 白んできた空よりの光が差し寝所を淡く染めて金華の姿が浮かび上がる。白き背は光を纏い発光し、その上を金糸の髪が川のようにさらさらと流れておる。  この国に誰一人と同じ色の者はおぬその美しき異形の姿。誰にも見せとうはないが我が王である以上このように貴重な者。いつまでも独しておるわけにはおるまいな……。 「そなたに頼みがある」  抱き寄せ問いかける。  肩に顔を埋めると正絹の如き肌、桂花の香りで我を包む。 「頼みなどと……どうぞいかようにもお命じ下さいませ」 「既存の寺院は国の下より()したが近く我は我の神殿を作る。その主はそなたである」 「な……」  驚き金華は顔を上げ我の顔を覗き見た。 「先ほどいかようにも命じろと申したではないか」 「し……しかし、そのような大きなお役目」 「王子らが元服しおる十三の歳に我は二人に王位を譲る。それまでに我はこの国を最強と成す。守りを固くし、民を賢くし、力を与え、田畑を増やし、貧を無くす。民が強くなれば国も強くなり戦をする益はない。国の地力をもって他を制す。国が強ければ他より奪われることも奪うこともない。しかし民はただ生きるのでは心を保てぬ。正しくは生きられぬ。何ゆえ自らの利よりも他を遇するのか、その意を解せぬ。良き行いがいずれ自らを守り、さらに自らの愛する者を救うのだという真の道を民に教えよ」  金華は呆然と我を見ておる。さぞかし荷が重かろう……その姿を晒せば害が及ぶ可能性も大きくなる。しかしそなたは必ず成し遂げられるであろう。そしてその場所こそがそなたにふさわしい。 「我は国を強くする。そなたはその心を受け持つのだ」  金華はそのまま崩れるように寝所に深く頭をつけた。 「謹んでお受けいたします。金華命の全てを持ってお勤めいたします」  このようなことそなたに巡り会わねば考えも及ばなかったであろう。王城を制した勢いそのままに民を圧し、他国を制し、幾百もの命を奪い、幾百もの恨みを纏い、何を成したところで何をも得られず、昏き空しき心のままで朽ちていたに違いない。  しかし今そなたを愛しいと思うと同じように他を愛しく思うことが我を満たすのだと解した。  我がそなたで満ちたように全ての民を我の力で満たす。  そなたの母御の教えは真理である。  恨みは他も己も全てを焼き滅ぼす。  必ずや我はそれを成し遂げ永世の平和を王子らに授ける。  そなたと共に……。

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