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第31話
金華の屋敷に参ると誉栄が寝所の上で金華の衣を被り震えて泣いておった。
その横には金華よりの書状。
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眩子様
勝手を致します
誉高様は必ずお助けいたします
全てわたくしの勝手な行い
誉栄様、童達、門兵の方には
どうぞお咎め無きよう
お願い申し上げます
金華
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泣きながら話す誉栄より一連の成り行きを知る。
不埒者は誰にも言わず、金華にひとりで参るよう策したのであろう。
死する覚悟である。
金糸の髪が切られ一緒に置かれておった。
その束を強く握る。
「亜藍。急ぎ我の精鋭を集めよ。あと四名 の者の所在を確かめ居れば拘束せよ!」
王宮の中さらにその奥の金華の屋敷にての犯、常に厳重な警備をひいておる。身の内の者の可能性が高い。
「は!」
+ ++ + ++ +
報を受け続々と王宮に配下が集まる。王の直属として動いておる。十五名ほどの者達。いずれも武勇、学識に優れ、人格も信のおける者達ばかりである。
「皆よう集まった。何者かに誉高が攫われ、金の楼主が独で後を追うておる」
王の言葉にどよめきが起きた。
「これは我が国、我に対する戦火 である。ここにおる者、全ての力、全ての知恵を持って速に解せよ」
『は!』
王の命に直ちに門番、童達など一連の者への調べが始まる。
王の前には国と屋敷の地図が広げられ賊の逃走経路の分析が始まった。
程なく亜藍が戻り四名の者、全てが居らぬこと報じてきおった。此度のことに関していること間違いない。しかしこれだけのこと。その者だけの犯とも思えぬ……。
「誉高様が戻られました!」
女官が大声にて報告してきおった。
「何?」
「父上様ーー!」
連れられてきた誉高が泣きながら走りより我にしがみ付いてきよる。
その姿から健のようであるが抱きしめ無事を認した。
「金華を助けて!」
金華も生きておる。苦き心地の中にもやっと息がついた思いがする。やすやす王子を戻したとあらば、やはり目 は金華であろう……ならばすぐに弑すことはないはず。
「泣くでない! 金華が大事であらば心を強く持ち、己の全ての力と知恵を持って尽力せよ!」
齢まだ八の幼き王子。しかし王の言葉に涙をぐいと拭い、強き目で賢者の真中に立ち、誉高は自分の見聞きした全ての顛末を話し始めた。
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