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第13話 絶望
※今回は、無理矢理っぽい表現があります。苦手な方は自衛または、そっとブラウザバックしてください。よろしくお願いします。
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「はぁ〜お腹いっぱいだ〜」
すっかり満腹になって、幸せな気持ちが少しずつ戻ってくる。
さっきまで悲しくてしょうがなかったのに現金だなと自分でも笑ってしまう。
一緒にクリスマスディナーを食べられるかもしれないからと待っていたが、いつまで経ってもジョシュアは戻ってこなかった。一人で暗くなった部屋で待ち続けるのに耐えられなくなったのだ。
やっぱりジョシュアは、おじいさんたちとのディナーを選んだようだ。ズキンと痛みが走る胸に気づかないふりをして、使用人の人たちが食事をするキッチンに行くと、ちょうど20人くらい集まっていて、これからディナーを食べるところだった。
ありがたく一緒に食べさせてもらう。今日のメインディッシュだろう、チキン?七面鳥?の丸ごと焼いたやつがどーんとテーブルに載っている。ほかにも野菜の付け合わせ、かぼちゃのスープとどれもすっごく美味しくて。デザートに出た木いちごのケーキも甘酸っぱくてさっぱりしたし、もう一つのティラミスもコーヒーのほろ苦さが、口の中で余韻を残し、いつまでも食べていられるくらいだった。
俺はリサに通訳してもらいながら、シェフの人たちに色々と料理について質問して、とても勉強になった。この家で働けるシェフは一流と言われる人たちなんだろうなというのが態度にも自信として表れていた。
「いいなぁ~こういう所で修業してみたいな」
ぽろっとこぼした発言をリサがみんなに伝えると、みんな口々にわーわー叫びだした。
リサが耳を塞ぎながら
「みんな大歓迎するそうよ」
と言ってくれるから、俺も嬉しくなってうんうんと頷く。
──久しぶりに楽しかったな
そんなことを考えながら、ジョシュアの部屋に戻り、1日の汚れがついた身体をシャワーで流した。
今日はジョシュアはいなかったけど、楽しい日だった。ローズと思いがけず親しくなったお茶会もあったし。せっかくのクリスマスイブに親戚まわりなんて絶対にイヤだと仮病を使って休んでるのよ、なんて言い出すもんだから、さっぱりとした性格のローズに親しみを覚えるのも仕方がないだろう。
そして俺がずっと聞きたかったことも聞けた。
「ローズは、本当にジョシュアと結婚するの?」
ローズは、もうすでにいくつもの逡巡を乗り越えてきたんだろう。諦めたような受け入れたような、落ち着きを見せていた。
そしてまるで自分自身にも言い聞かせるように
「正直、同じαとしてもあっちのほうが力が強いし、ビジネスの話にもわからないなりにきちんと聞いて理解しようとしてる。私も彼の能力には驚いたわ。もしかしたら本当に後を継いでもうまくやっていけるかもしれない」
思わず言葉に詰まってしまう。
ゴクリと唾を飲み込み、ローズの言葉を待った。
この国ではαはαと結婚し、子をなすことが最上だと信じられていること。ただ、どうしてもα同士のカップルでは妊娠率が低く、無事に出産できる人もそんなに多くない。
そこでΩの力が必要になる。妊娠率が高く、産まれる子どももαかΩがほとんどだからだ。といってもあくまで愛人のような立場でしかいられない。公にはα同士の子どもとして扱われるため、たとえ子どもを産んだとしてもΩから離されることも少なくないらしい。
「私は、彼に恋愛感情はないけれど、おじさまにとってそんなことは重要じゃないしね。このままだと結婚は決定事項だと思うわ、残念ながら。でも、あなたはそれでいいの?」
おじいさんの『Ωの10人でも20人でもそばに置ける』という言葉を思い出してゾッとする。
何も言えない俺を見て、ため息をつきながら
「あなたも大変な人に目をつけられたものね……」
とローズに同情されてしまった。
そんなことを思い出してベッドに横になると、色々な疲れが俺の身体から滲み出てくるようで、俺はまぶたをゆっくりとおろした。
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どれだけ眠っていたのだろうか、ドタンバタンという荒々しいドアの開閉音で、うっすら目が覚める。
「……っ?!」
まだ覚醒しきっていない身体に、伸し掛かってくる重みが、あまりに重くて声にならない悲鳴が漏れる。
伸し掛かっているやつは、そのまま俺の身体をまさぐり始める。耳元ではフーフーという荒い吐息が聞こえてくる。
「……っやめっ!!」
恐怖のあまり、パニックになりそうになる。逃れようとじたばたしても、上の奴はびくともしない。しばらくすると、甘い香りとともに、なんだか薬品のような匂いがしてきた。
ドクンッ
急に身体中を巡る血が沸騰したかのような感覚がする。体温が無理やり上昇させられて、息が上がる。なぜか下腹部に熱が集まってくるようなのが、ヒートの時のようで嫌な感じだ。まだヒートには早いはずなのに頭がぼーっとしてしまう。
「……っん!」
気がつくと着ていたパジャマのボタンが外されていて、突起をいじられている。
「…っやだっ!……いやっ」
もうやめてほしいのに、がっしりとホールドされていて逃げ出せない。そして恐ろしい手は胸だけではなく、俺の緩く勃ち上がった下腹部にもおりてきた。後ろから抱え込まれるように腰だけ高く持ち上げられる。ズルリと下着ごとパジャマをおろされ、後ろの孔が丸見えになってしまう。
ハァハァと荒い息が、首筋にかかってさらに恐怖感が増す。
「……かっ、噛まないでっ!」
涙なのか鼻水なのか、シーツに顔を押し付けたまま流れ出す体液も拭えずに懇願する。
背後の気配が首筋から消えてほっとしたのもつかの間、後ろの孔にひたりと質量のあるものが当てられる。
そして解してもいないその場所をめりめりとこじ開けるように挿入が開始された。
「……ひっ、……い゛、いだ……っ!……うぅっ……じょ、じょしゅあぁ〜~!」
無理やりに最奥まで、突っ込まれ、間もなく荒々しい抽挿が始まった。胎の中を火のついた鉄の棒が入り込んでくるような感じがして、その場所からどんどん熱くなってくる。
「……う゛〜、もっ、……やめてっ……!いだ!い゛だい………」
叫んでも、叫んでも誰も来ない。
ジョシュアが、俺のことを放っておくからこんなことになってしまうんだ…。
もう俺、穢れてしまったよ。そばにいられないじゃないか────。
揺さぶられながら、薄くなる意識の中で感じたのは絶望だった。
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