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第23話 光明
康の告白を聞いて、俺は奥歯を食いしばる。それでも、なんでもないように装って
「……それは辛かったな…。康の身体は? 痛いところはないか? ごめんな、何にも知らなくて、一人で辛い思いをさせた」
できるだけ傷つけないように、そっと痩せた身体に腕を回す。康は大きく肩を震わせたが、しばらくすると頭を俺の肩に預けてくれた。康が落ち着くまで、背中を優しく撫で続ける。
「……お、お前は、嫌じゃ……ないのか……? おれ……こんなに……なっちゃった……んだよ?」
俺の服にしがみつきながら、涙ながらに尋ねてくるから、
「……俺は、康が好きなんだ。どんな康でも嫌いになったりしないから心配するな」
康の目を見て、そう言うと、康は俺を探るように、しばらくじっと見てから、ホッとしたような顔をして、こくんと頷いた。
康の前では冷静を装っていたが、頭の中は沸騰直前だった。俺の康に手を出した奴がいる……? クリスマス前日の夜か……。ディナーに出席していた奴だろうか……。
Ωである康の甘いフェロモンは、行為中も弱々しいながらも、漂ってきたし、それとなく首を見たけれど、きちんとカラーをつけていて、番にはなっていない。
康には悟られないように、頭を回転させる。
その後、下膳に来た真鍋先生から、いきなり長い時間は、康の負担も大きいから、そろそろ寝かせてあげてくれると嬉しいと言われ、今日のところは帰ることにした。
「また明日来るから」
そう言って、唇にキスを落とすと、頬を染めて
「……ん」
と返してくれた。
病院を出るとすぐにスマホを取り出し、電話をかける。
「……俺だ。ちょっと聞きたいことがある」
──────
……これは都合のいい夢じゃないかな? いつも悪夢ばっかり見てる俺に、たまにはどうぞって神様か誰かがプレゼントしてくれたやつ。
ジョシュアが病室から帰っていく背中を眺めながら、俺はぼんやりとそんなことを考えていた。
頬を引っ張っても、腕をつねっても……うん、痛い。……ということは現実か……?
嫌われるか、罵られる覚悟で告白したら、まさか、ジョシュアにそんなこと関係ないと言われるとは。あんなに辛かったのに、痛かった心も身体も少しだけ軽くなる気がする。
ジョシュアを信じてもいいのかな……。霞がかってよく見えなかった未来に一筋の光が差し込んだような気がした。
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