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第2話 証拠

 出迎えてくれたリサと一緒に、バンに乗って辿り着いたのは、街中から少しだけ離れた、静かな住宅街に佇むこじんまりとしたペンションだった。  以前、訪れたゴルドー家ではないことに胸をなでおろす。またあの屋敷に戻るのかと思って自然と身構えていたのだけど、ジョシュアも俺を気遣ってくれたのかもしれない。  明るくてふくよかなオーナー老夫婦に迎えられ、まるで絵本の中に出てきそうなカラフルで可愛い部屋に通された。黄色の壁紙に、ピンク色の花柄のベッドカバーのベッドが2つ並んでいる。2階の窓からは、すでに暗闇に包まれているが、街の様子も眺めることができて楽しい。  荷物を置いて、ベッドに腰かけるとホッとため息がこぼれた。このままシャワーも浴びずに寝てしまおうか……。  でも、せっかくだから夜ご飯を少しお腹に入れておきたい。  そう思ったところで、ジョシュアと一緒に部屋の片付けを手伝っていたリサに声をかける。 「ねぇ、リサも一緒に夜ご飯食べていかない? もう結構、暗いしさ」  すると、リサが答える前にジョシュアに目を向けた。ジョシュアは、リサからの目配せを受けて、一度頷くと 「康、ご飯の前に少しだけ話をしてもいいか?」  急に真面目なトーンで話し出したジョシュアに戸惑う。 「ジョシュア、急にどうしたんだ? 何の話だよ?」 「実は、この前、康からゴルドーの屋敷で起こったことを聞いてから、ずっと俺は康に酷いことをした奴を突き止めたいと思っていたんだ」 「え……」 「俺は、大事な康を守れなかった……そう思って」 「……も、もう、いいんだ。俺はもう忘れたよ、そんなこと」 「ごめんな。辛いことを思い出させてしまうかもしれないが、話しておきたいんだ。俺は、康から話を聞いてすぐ、リサに連絡をしたんだよ」 「……。」  ジョシュアは、真剣な表情で俺を見ながら、隣に腰を下ろした。そして、膝の上に置いていた俺の手を握る。  リサは、紅茶を淹れて、そっとベッド脇のチェストに置いてくれた。俺の好きなミルクティー。 「リサなら、その時のことを知っているかもしれないと思って。そうしたら、さすがだったよ。俺の予想以上だった」  リサも口を開く。 「……私は、あの時に康に何があったのか、聞かなくてもだいたい分かったよ。すごく酷い顔していたし。だから、康の身体を綺麗にした時のタオルや、着せたバスローブは保管しておいた。証拠として大事に」 「……証拠?」 「そうなんだ。リサが保管してくれていたタオルからDNAを調べて、出てきたのが康自身のものと………そして俺のだったんだ」  意味がわからない……。  俺とジョシュアのものって………。  何も答えない俺を見て、ジョシュアが、俺の手をぎゅっと握る。 「康、本当にごめん。あの日、俺は食事会で催淫剤を盛られたんだ。それでラットになった。そしてそのまま部屋に戻って、康を抱いた。……本当にすまない。俺が、康を苦しめた張本人だったんだ」  目を見開いて、ジョシュアの顔を見る。ジョシュアは、苦しそうに俺を見ている。冗談じゃないってことか……。 「……急にこんな話をされて、混乱させてしまうよな。俺もさっきリサから検査結果を聞いたんだよ。ごめんな。それでもし、康が俺と一緒にいるのがキツイなら、別の部屋をとるから」  そう言うと、もう一度、俺の手をきゅっと手を握って、ゆっくり離した。そして、立ち上がって、部屋を出ていこうとする。

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