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第3話 和解

 出ていこうとする背中が、スローモーションのように映る。  このまま行ってしまうのか……。  また一人になるのか……。  そう思ったら、胸がぎゅっと痛くなった。その痛みを自覚すると、黙って見送ることなんてできそうもない。顔を上げると、大きな背中に思いをぶつけた。 「……また、そうやって俺を一人にするのか?……何も言ってくれない、何も聞いてくれないんじゃ、俺たち、離れる前と、なんにも変わらないじゃないか。……ジョシュアがそうやって俺を一人にするなら、今日はリサと寝るからなっ!」  言い始めたら、だんだんと興奮してきてしまう。リサとなんて、もちろん本気じゃなかったけど…。  ジョシュアの背中がピクリと揺れる。そのまましばらく固まっていたが、ゆっくりと振り返る。 「……リサと……?」  そこかよ。  俺が、何も答えずにジョシュアを睨みつけていたら、ジョシュアがゆっくりと近づいてくる。お互いに目を逸らしたら負けみたいに、睨み合って。 「……それはダメ……康は、俺と寝る」 またそうやって、いきなり怒られた子犬みたいに。見えない耳がしょんぼり垂れているようなのはズルい。こうなると、俺の怒りも興奮もすぐに収まってしまう。 はぁ〜と深くため息をついて、 「…ん」 と両腕を広げて待つ。 そこにジョシュアがかがみ込んで、抱きついてくるから、背中をポンポンと優しく叩いてやった。 「ジョシュアの悪いとこだぞ。…俺も一人で突っ走りがちだけどさ。俺たち別々の人間なんだから、言わなくてもわかることなんて、本当に少ないよ。ジョシュアが思っていること、ちゃんと話してくれ。俺もそうするから」 「……ごめん。もう離さないって思ってるくせに、自分が康を傷つけたと思ったら、一緒にいてもいいのか、急に不安になった……」 「……ん。俺もまだ混乱してるし、ちゃんと飲み込めてないけど、でも、ほかの誰でもなくてジョシュアだったのかって……それは、……良かった……と思ってる」 そうして、ようやく2人で見つめ合って笑ったんだ。 「……ちょーーーっと、私が、まだいるんですけど!」 ハッとして、声のする方を見ると、リサが呆れたように立っていた。 「あはは、ごめん。ね、みんなでご飯行こうよ」 そうして3人だけで夜の街に出かけていって、温かくて美味しい食事を食べながら、俺は久しぶりに心の重荷がとれたように楽しい夜を過ごした。

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