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第5話 喧騒

 ガヤガヤとした人々の話し声と、オーケストラの演奏が、天井から煌々と会場を照らすシャンデリアに反射して、きらめきとなってホールに降り注いでいるようだ。  俺は今、とても華やかなパーティー会場にいる。なぜだろう……。俺も知りたい。  ジョシュアに「このためにデリウィグに来たと言ってもいいくらい」と、言われて連れて来られたのがこの場所なのだ。朝っぱらからジョシュアの誘惑をかわし、デリウィグの美術館とか公園とか、ガイドブックでぜひ見ておくべきって場所に行って楽しんでいたんだけど。  午後にいきなり洋服屋に連れて行かれて、あれよあれよと言う間にタキシード? 結婚式とかで男性が着るような服に着替えさせられ、気がつくと髪もセットされていた。  普段しないことだから、なんだかげっそりしてしまっているうちに、車に乗せられて、ここまで運ばれていたのだ。  ホールは、かなり広い。俺が知っているホテルの大広間よりずっと広々としたホールで、数百人は、来ていそうだ。年齢も、肌の色も様々な人たちが、食べ物を食べたり、踊ったりしている。誰でもが楽しそうで、すごい盛り上がりだ。 「遅かったじゃない!」  後ろから声をかけられて振り向くと、黄色のドレスに栗色のロングヘアーを緩く巻いた可愛らしい女性がニコニコと立っていた。 「…え、えと? ……どちら様ですか…?」  俺がそう言うと、その女性はジョシュアと目を合わせて笑い出した。   「あはは……! 私よ!」  えーとっ……あれ、この笑い方どこかで……? 「え……り、リサっ?!」 「遅いよ! 康ってば、わからなかったの?」 「いや、ごめん。なんだかいつもの服と違うから分からなかったよ。でも、すっごくステキだね」 「ふふ……ありがと! 」  さっきから全然話が読めないぞ。混乱し始めた俺は、隣でタキシードを誰よりも着こなしている、どこぞの王子様みたいな奴に尋ねた。 「……ねぇ、ジョシュア。そろそろ俺をここに連れてきた理由を教えてくれよ」  ジョシュアがニヤリと笑って口を開こうとした時、カツカツカツと、いつか聞いたようなハイヒール音が近づいてきた。 「ハロー、久しぶりね、康! 急に帰ったからびっくりしたわよ! でも、またあえて嬉しいわ!」  ぎゅっとハグされて、なんだかドキドキしてしまう。 「わっ、ローズ! 元気にしてた? この前はごめん。ちょっと事情があって帰ったんだよ」  今夜のローズは、紫色のグラデーションになったシンプルなドレス。シンプル故に、元々持っている彼女の美しさが際立っている。 「わぁ〜、今日もカッコいいし、綺麗だ」  思わず本音がこぼれ、ローズは 「フフ、ありがと」と、これまた妖艶な笑みを浮かべて応える。  すると、焦ったようにジョシュアが俺の肩をガッと掴んで「い、いつの間に、ローズとそんなに仲良くなったんだよ!? 」と揺さぶってくるから、俺は「さあ? 誰かさんが俺を放っておくからだろ〜」と言ってやる。  後で絶対、聞くからなとすごむジョシュアを宥めて、ここは一体何のパーティーなのか尋ねる。  すると、ジョシュアはなんだか誇らしげな顔で言った。 「ここはデリウィグの" 公式の社交場"なんだ 」

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