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第3話~少し遅かった愛のキューピッド~

 どうして俺は空を見ているの?  さっきまで座っていた芝生が背中にあって、俺と空の間に涼平がいる。  涼平の顔、ゆっくりと近づいてきた。 「いづるが好きだ。ずっと前から好きだ。高校の頃から好きだった。でもお前は真藤さんの事が好きだったから我慢していた。だけど……」  真っ直ぐな眼差しが空から俺を見つめる。 「いづるが真藤さんを諦めるんなら、俺の気持ち伝えたい。お前を泣かせない。絶対にお前を幸せにする」  涼平に組み敷かれている。  ようやく状況を理解した。ようやく涼平の言葉を…… 「俺じゃ真藤さんの代わりになれないか」  なんて答えたらいいんだろう。  なんて答えたら…… 「……なんて言われたら俺を受け入れられる?」 「えっ」  ふわり、と涼平が上から降りて、俺を引っ張り起こした。 「えっと?」 「俺に告白されて困ったのは、まだ心の中に真藤さんがいるからだろ」  俺を起こした手は繋いだままで。  きゅっと強く手を握られる。 「全部伝えなきゃな」 「うん」  きゅっと手を握り返す。 「ありがとう」 「うん」  もう一度、きゅっと強く握った手がふわり……  羽のように離れた。 「行っておいで」 「コーク貰っていい?」 「どうぞ」  小さくなっていくいづるの姿を涼平は見送る。  初恋は実らないと言うけれど。 「実るものなら実らせてあげたい」  好きな人が幸せになるのなら。  ちょっと悔しいけれど。 「本気の告白だったのになぁ」  しかし…… 「社会人であの告白はないっか」  高校の時なら落とせたかも知れない。たぶん、きっと……

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