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第2話

ロケ当日は朝早くに事務所に集合。 先生は自分の赤いポルシェを運転して ボクとあと2人はワゴン車で機材と一緒に 現場に向かった。 「天塚君、ね。よろしく。  運転してる方が悠一、俺は拓也」 同乗の2人は先生のところで長くアシスタントをして 今は商業カメラマンとして独立し 時折こうして 与謝野先生のヘルプにつくのだという。 簡単に到着後の段取りを話したり ボクの学校の事を話したり 2時間ほどで現場に到着した。 海沿いのギリシャ風の白い建物の一軒家のハウススタジオ。 撮影は、 まず1日目は庭、それから夕方の砂浜。 2日目は、早朝の砂浜と、室内で3カット。 機材を降ろして準備していると 関係者が続々到着してくる。 来る途中に車内で教えられた通り ボクは下っ端らしく軽い挨拶をするだけで 裏方に徹する。 スタイリスト、ヘアメイク、ディレクター、スポンサー、 そして最後に、モデルの櫻井春瑠が到着した。 写真で見た印象よりも背が高い。 もっと華奢かと思ったけれど、 意外と筋肉がしっかりしてる。 黒髪が、 サラサラなのに濡れたような艶がある。 パッと彼の周りにだけ スポットライトが当たっているみたいに明るい。 「おはようございます。  櫻井春瑠と申します。よろしくお願いします」 よく通る声に驚いた。 軽く挨拶を終えると 櫻井春瑠は庭で構図を確認していた与謝野先生のところに行き 少し談笑した後 控室にあてられた部屋に入っていった。 先生と櫻井春瑠が仕事をするのは初めてではない。 今回の撮影を先生が請けたのも 櫻井春瑠たっての希望なのだそうだ。 打合せ通り、ボクはレフ版を持って先生についてまわる。 撮影は先生の仕切りで すがすがしい緊張感の中 順調に進んだ。 実家の写真館の和やかさや 学校の友人達との課題撮影とは 空気感が全く違っている。 ボクは先生の指示を受け レフ版を上下左右に傾けて モデルに光を当てた。 光に照らされた櫻井春瑠は 自らの内側からも光を放って キラキラと輝いている。 思わず目を奪われる。 「天塚君、何見惚れてんの。  次ビーチに行くよ」 先生に言われ ハッと我を取り戻す。 そんなボクを見て 櫻井春瑠がクスっと笑った。 「ちょっと衣装変えてきますね、  ええと……」 笑顔がまぶしいっ! 「君、名前もう聞いたっけ?」 「あ、天塚陽斗(あまつかあきと)です。  天国の天に貝塚、  太陽の陽に北斗七星の斗です」 「アハ 貝塚とか久しぶりに聞いた。  太陽の陽を『あき』って読むんだ、『はる』じゃないんだね。  じゃアキ君、またあとで」 そう言って室内に姿を消した。 「おおい天塚君、行くぞー」 ボクは再びハッとなって 急いで先生の後を追いかけた。 ちょっと走っただけなのに 胸が以上にドキドキする。 ボクこんなに体力なかったっけ?

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