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第2話
ある時階段を駆け下りる晃誠をじっと見ていたら、同じクラスの三島 が来て慌てて目をそらした。
「あいつ吾妻だろ?」
返事をしようか迷っていたら三島は続けて言う。
「運動神経いいくせに、あいつ部活入ってないらしいよ」
三島が言うには、晃誠は俺と同じ帰宅部らしい。やる気がない俺と違って、活発そうに見えたから意外だった。
「え、何で?」
「さあ」
その疑問が解けたのは秋の音楽祭だった。合唱の伴奏をする晃誠を見ていたら想像以上にかっこよくて、一瞬自分の出番も忘れたほどだった。
入学式のときの光景が再び去来する。鍵盤に向かう端正な横顔に見とれながらふと、俺と同じように思った男子はどれくらいいるのだろうかと気になった。男子校なのに、いつか横からかっさらわれるのではないかと気が気でなかった。
俺はどんどん晃誠に惹かれていった。自分では人懐っこい方だと思っていたのに、彼を見ると下手に意識してしまい、話しかけることすらできなかった。
結局中学3年間特に接点もないまま高校まで上がった。
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