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第3話
高校1年の始業式。クラスの確認のため下駄箱に張り出された名簿を見ると、吾妻晃誠という名前の少し下に自分の名前を発見し驚いた。
信じられずに何度も見直し、やっと実感がわいた。心の中でガッツポーズをしたのは言うまでもない。
同じクラスなら話しかけるチャンスもあるに違いないと密かに期待した。
そうは思っても、意識しすぎてしまい、晃誠とまともに会話ができたのは一ヶ月も先だった。
5月の連休明け、今日こそは意気込み、「おはよう!」と努めて明るくあいさつをすると返事が返ってきた。
この調子で続けて名乗ろうと名前を言いかけたところで、
「大石 だろ?」
と返された。俺は驚きを隠せない。
「何で知ってんの?」
まさか覚えてくれてるとは思わなかった。
「同じクラスだから当たり前だろ」
そんな当たり前のことで舞い上がり、思わず顔がほころんだ。
晃誠はいい奴で、彼の周りには人が集まる。その隣に俺の居場所があったらいいなと思った。
晃誠と話すようになってからは、仲良くなるのにそう時間はかからなかった。次第にお互い名前を呼ぶ合うようになった。
俺は友達でいられるのなら、ずっとこのままでいいとすら思った。
晃誠はいい奴だから人を偏見で見たりはしないとわかってはいても、この関係を壊したくなかった。
俺の邪な気持ちがバレてしまわないようにと、友達の振りをして側に居続けた。
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