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明良 -3
楽しみにしていた金曜日、オレはまたまたゲイバー『優~スグル~』へ来ていた。
これで3週連続だ。
冬のボーナスのおかげで、少しだけ余裕はあるものの、そろそろ厳しくなってきて、ゲイバーなんてきっとこれが最後って思うんだ。もし次があるとしたら夏のボーナスの後かな。
今日はスグルママの誕生ドンチャンってことで、前金制の飲み放題だ。ツマミも適当にドンドン出すらしい。そして、仕事が終わって直ぐ来たにもかかわらず、店内は既に盛り上がっていた。
「誕生日おめでとうございます」
「いらっしゃ~い♪ いや~ん、ア・リ・ガ・ト♪ 今日は一人5000円よ~。ただし、ワタシにチューしてくれたら特別に半額にしちゃうワよ~。もちろんベロを入れた濃厚なヤツネ♪ 照れちゃヤ~よ、ブチューっといっときましょ♪」
か、カンベンしてください!
スグルママに抱きしめられて(しかもすごい力だし)、唇を突き出してキスを迫られたが、何とか頑張って阻止したオレ。ふぅ~。
ほっぺたにチュッとキスして、それで勘弁してもらった。
「んもぉ~、ウブなんだからぁ♪」
結局3500円になった。スグルママ、ありがとう。
今日はカウンターじゃなくテーブル席に案内された。ほとんどの人が初めて話す人たちだったけど、楽しい人たちで、オレもすんなり溶け込むことができたと思う。普段は女子に囲まれた職場ってこともあり、オレは同性との会話に飢えていたのかもしれない。
店から提供された甘めのカクテルを飲みすすむうちに、いつのまにか酔ってたんだと思う。周りに聞かれるたびに、素直にいろいろ答えてたから……。
「今まで彼女ひとりだけなの? エッチとかした?」
「してませんよ~。キスしただけだしぃ」
「そりゃ残念だったねぇ」
「う~ん、残念だったのかなぁ? 別にエッチしたいとか思わなかったけどぉ」
何話してんだよ、オレ!
でもこの時は酔ってて、ヘンなことは何も言ってないつもりだったんだ。
「優 クンてさ、ゲイなの?」
「どうなんだろぉ? でもそぉかも~。片思いの相手は男ばっかだったしぃ」
「でも彼女いたんでしょ」
「あれは~、付き合って~って言われたからでぇ。断っちゃ悪いかと思って~」
「今付き合ってる人いるの?」
「いないですよぉ。欲しいで~っす」
「優くんはさ、背高い顔もまあまあだしで一見するとタチだけど、その性格だとネコちゃんだね。甘やかすより甘える方が好きでしょ」
「え~そうですかぁ~? でも甘えたいですねぇ」
酔って、間延びしたしゃべり方になって、それが甘えたカンジになってたと思う。でも自分では普段と同じしゃべり方をしてると思ってたんだ。
途中から記憶が定かじゃない。
気がついた時オレは、知らないオトコとキスしていた――!
「ん、ふ……、んん……っ、ん」
口の中に入ってきた、そいつの舌が、オレの中で動き回る。舌を吸われ、絡められ、そしてまた吸われ……。周りで囃し立てる声がしてるような感じがするけど、何も聞こえない。気持ちいい、何も考えられない。口の中からするピチャピチャと言う音だけが聞こえていた。
「は……」
一旦離れてった唇。そして顎を捕まれて、また寄せられる……。
「ん、ん、んんっ、んっ!」
気持ち良い。でも苦しい。息が出来ない……。
それを最後にオレの意識は沈んで行った。
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