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    明良 -6

 スマホの呼び出し音で気がついた。  どれくらい眠ってたんだろう? でも外は明るいから、そんなに長時間じゃないハズ。  全裸でベッドに横たわるオレに対して、明良さんは既に服を着ていた。 「何? ……今? (スグル)と一緒。食ったかって? そんなん聞かんでもわかんじゃん! つか朝まで我慢したオレって偉くね? ……これから? ……ウン、ウン、いいよ。……えー、オレは一回食ったからどっちでもいいけど。……それもそうだな、まあ聞いとくわ」  何の話だろ?  何かオレの名前が出てたような気がするんだけど。  初めてのセックスで、ダルい身体を横たえたまま、オレは明良さんの方を見た。 「よっ、起きたんだ。身体は大丈夫か? そんなに激しくしてないんで、そろそろ動けるんじゃね? 今、理央からデンワあってさ、これから来るってよ」 「理央?」 「あー、覚えてねぇか。ふわっとした茶髪で、目がクリクリっとしたヤツ。昨夜はアンタの対面に座ってたと思うぜ」  言われて何となく思い出す。そう言えば、そんな人が目の前に座ってたような……。 「で、その理央さんって人が何て?」 「ヤリたくなったから来るってサ。おまえがいるって言ったら是非にって言ってたぜ。3人でどぉよ? おまえ初めてだったし、さっきの1回じゃもの足んねぇだろ。ふたりで気持ち良くしてやっからさ」 「あ……、な……」 「アイツ両方いけるしチャンスじゃん。童貞捨てれるぜ」  途中から、言ってる意味が分からなくなった。  何を言ってるの?  それってどうゆう意味?  頭が混乱して何も言えず、目を見開いて明良さんを見るだけ……。 「あれっ、言ってなかったっけ? オレって特定の相手を作らない主義。オトコ同士なんて子供が出来るワケも無いんだしさ、ヤリまくって楽しんだ者勝ちじゃん。で、どーよ? なんか理央もやる気満々なカンジだったぜ」  コノヒトタチハ、イッタイナニヲイッテルンダロウ……。  さっきまでのオレの中の甘い雰囲気は一瞬にして消え失せた。  3人で? 冗談じゃない!  そもそもセックスって、好きな人とするもんじゃないのか?  と、そこで思い出す。……オレ、雰囲気に流されてしちゃったんだ。 「か、帰ります!」  慌てて服を着て家を出た。  玄関を出る時に「またなー。右行ったら駅だぜー」と声が聞こえてきた。そう言えば、ここがどこかも知らない。  腰はだるいし、お尻は痛い。でも、それ以上に心が痛い。オレ、流されて何てことしちゃったんだ。  どうやって帰ったか覚えてない。気がついたら自宅だった。  零れそうになる涙をガマンして、とりあえずシャワーを浴びることにした。  服を脱いだオレの上半身が、洗面所の鏡に映っていた。  鎖骨にキスマーク。先ほどのセックスの余韻。  シャワーを浴びながら、オレは声を出して泣いた。

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