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    宇佐見 -6

 宇佐見さんがオレのことを好き。  昨夜のことを思い出してはニヤニヤしてしまう。店を出て駅に向かうとき、一瞬だけどキスしてくれた、それが忘れられない。アルコールが入ってたにもかかわらず、昨夜はほとんど眠れなかった。ずーっとドキドキしてて、それは今も続いている。 「間宮クン、何かいいことでもあったの? さっきからずっとニヤニヤしてて、なーんか怪しいなぁ。もしかして彼女でもできた?」  女の人ってスルドイよなぁ。てゆーか、もしかしてオレって分かりやすい? 「かっ、彼女はいませんっ」 「ムキになって否定するあたり、ますます怪しい。ねぇ、どんな子? ほらほら、オネーサンに白状してみぃ」 「だから、彼女いませんってば―っ」 「……間宮、ひとり身をアピールするのはいいが、それは終業後にやってくれ」  和田さんの指摘に思わず大きな声が出てしまったオレ。瀬川部長に怒られちゃったじゃないか。  彼女じゃなく彼氏です。ひとり身アピールなんかしません。  オレは心の中でだけ、二人に返しておいた。  そしてオレは、なるべくニヤニヤしないように努力しつつ、仕事を再開した。  気のせいだろうか? 先輩女子たちの視線がいつもと違うような気がする。  終業後、帰ろうと思ったところで、先輩女子たちに囲まれてしまった。  えっ、オレ何かした? 「間宮クン、彼女いないってのホントよね?」 「間宮クンは、総務部のマスコットなんだから、当分彼女作っちゃダメよ」 「好きな子が出来たときは言いなさいよね。私たちがちゃんと見極めてあげるから」 「肉食女子4人組の件もあったからねぇ~」 「そうそう、ヘンな女に引っかかったらって、私たち心配してるんだよー」 「あっ、開発部で間宮クンがいいって言ってた子、とりあえず脅し入れといた」 「ナイスじゃん」 「ああああのっ、ホントに彼女いませんからっ。ボク帰ります。お疲れ様でしたっ」  嗚呼、オレって先輩たちに愛されてるんだなぁ……じゃなくて、何コレ?  今まで知らなかった衝撃の事実。何なのこれ? 先輩たち怖すぎる。  マスコットって何さ? オレの立ち位置って、もしかして総務部女子のペット?  とりあえず、宇佐見さんのことは絶対彼女たちにはバレないようにしなきゃって思う。バレたら最後、マジでイジられまくりそうだ。  視線を感じて振り向いたら瀬川部長と目が合った。  ニヤリとした表情がとても怖いんですけど……。  私生活を知られるような機会は無かったハズなのに、何か不安になってしまう。  部長、背中から出てるそのオーラ、オレに向けて出すのは止めてください。 『土曜日、空いてたら一緒にいないか?』  夜遅くに宇佐見さんからメールが来た。それだけで嬉しい。そしてその内容に、もっと嬉しい。  メールを見ながら、オレの心臓はまたドキドキしていた。  おやすみなさい……、宇佐見さん……。

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