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    宇佐見 -7

 デートだ! 今日は宇佐美さんとの初デート!  嬉しくって、早く目が覚めてしまったオレ。子供かって言われそうだ。  待ち合わせは11時。今日は宇佐見さんも電車で来るそうだ。  今日の目的はショッピングだ。オレが買いたいものがあるって言ったら、宇佐見さんが付き合ってくれるって。ついでに、二人でブラブラしようってことになった。  最初はオレの用事で、自転車の消耗品なんかを買いに向かった。宇佐見さんは、珍しそうにいろんなパーツを見ていたんだけど、その様子が、なんとなく楽しそうに見えた。  宇佐見さんもついでだからって、仕事用のソックスを買ってた。しかも5足をまとめてお買い上げって……、おおぅ、もしかして、これが大人買いってヤツなんじゃね? 「この前2足ダメになったから補充。面倒なんで、ソックスとかはまとめ買いすることにしている」  今まで知らなかった宇佐見さんの一面を見れて、ちょっと嬉しかった……。  遅めのランチは、カフェみたいなところで取った。そのとき映画の話題になり、流れで、食後はDVDを売ってる店に行くことにした。  なんて言うか高校生みたいなデート? オレはほとんどしたことが無かったから、こんなのがとても嬉しいんだ。ふたりで並んで歩く。仕事帰りに食べて帰るときに比べて、距離が近いような気がして、それがなんかくすぐったい。 「そう言えば、宇佐見さんて、身長どれくらいあるんですか?」 「183。間宮も同じくらいだろ」 「そうですね、オレは181です」 「デカい男が二人並んで歩いてたら、邪魔だって思う人もいるかもな。ま、気にしないけど」  そう言って笑った宇佐見さんの笑顔は、いつもより優しそうに見えた。  映画のDVDは、お互いに見たい映画を1枚ずつ選ぶことにした。オレの「DVDは1000円以下のモノだけを買うってのがポリシー」発言に、何故か宇佐見さんはかなりウケていた。結局選んだ映画は、オレがアクションもので、宇佐見さんは……、ホラーだった。 「その映画は、ひとりで見てくださいね。オレは絶対見ませんから」 「えっ、もしかして間宮ってホラーダメ? 意外だなぁ、でもこれはそこまで怖いヤツじゃないよ。どっちかっつーとギャグ。間宮でも大丈夫」 「そこまでって、どこまでですか? ダメです、見ません!」 「つれないなぁ。でもそんなの聞いたら、何としても一緒に見たいと思うんだけど」  いいこと聞いた、とばかりに、ニヤニヤする宇佐見さん。うぅ……、キライだ。好きだけど、キライだ。  その後は、宇佐見さんお勧めの、つまみの旨い居酒屋に連れてってもらった。飲むにはまだ少し早い時間なのだが、人気の店らしく、すぐ満席になってしまうんだそうだ。  いつも思うんだが、宇佐見さんはいろんな店を知っている。オレなんて、会社の飲み会で使う居酒屋か、自宅付近の定食屋くらいだと言うのに。  魚がメインのこの店は、どれも新鮮で美味しくて、かなり満足した。さすが、お勧めの店だけのことはある。普段肉ばっか食ってるオレだけど、魚もキライじゃないんだ。  最初はビールで乾杯して、それから冷酒を1杯。普段は飲まない日本酒だけど、魚料理には合っていて、するすると酒がノドを通っていった。おかわりしたかったけど、1杯で終了。酔ってポヤンとし始めてきたオレを見て、「今日はここまでな」と、止められてしまった。  この後今日買ったDVDを一緒に観ようって誘われたとき、オレは即了承していた。  もっと一緒にいたかったんだ。これで解散ってなるのはイヤだった。  移動はタクシーで。電車に乗るとばかり思ってたから驚いた。タクシーの中では手を繋いでくれて、それがちょっとくすぐったくて、でも、すごく嬉しかった。  コンビニ前でタクシーを降りて、酒やらジュースやら菓子なんかを購入した。 「やっぱ映画にはポップコーンしょ」と言う宇佐見さんに対し、 「酒があるんなら、ピーナツとかいいんじゃないですか?」と、オレ。  結局両方カゴに入れたけど。こんな会話が楽しい。 「お邪魔しま……す」  初めて入った宇佐見さんの家。ちょっと緊張する。  宇佐見さんは、玄関で靴を脱いだオレを抱きしめてキスしてくれた。触れるだけの軽いキス。  それだけで固まってしまうオレ。ううう……。 「映画観るぞー」  ポンポンとオレの背中を撫でてから、宇佐見さんはリビングの方へ向かって行った。余裕あるなぁ、ちょっとくやしい。 「観るのはオレの選んだ映画の方ですよね?」 「おうっ、そっちの方の映画だ。灯り消すぞ。一応見えると思うけど、菓子とか酒の場所確認しとけ」  テーブルに買ってきた菓子を広げ、渡された缶チューハイのフタを開けたところで、灯りが消えた。DVDは、他の映画の宣伝とかが最初に流れて、そして本編が始まった。 「宇佐見さん」 「んっ?」 「これ、ホラーだし。オレの選んだ方じゃないじゃん」 「ん――。間違っちゃったみたい、、、な?」 「もしかしてワザと?」 「そんなことないよ。……ま、せっかくだからこっち観よう。怖くなったら頭撫でてやっから」  確信犯じゃん。オレは思わず宇佐見さんをにらみ付けた。  灯りは消えてるものの、画面からの光で宇佐見さんの顔は見えていて、その顔はどう見ても……笑ってる。  結局オレはガチガチに緊張しながら、映画を観始めた。 「……ヒッ!」とか「ギャーッ!」とか言うオレの声が、映画の音声と共に部屋に響き渡る。その度に宇佐見さんはゲラゲラ笑って「そこまで怖くないぞー」とか、「お前の反応面白すぎ」とか言ってる。ひどい。そして怖い。  あまりの怖さにソファからずり落ちてしまった。涙目です。スイマセン、ゴメンナサイ、もう無理っす。 「……オレ、もう限界」  半泣きでそう言うオレに、同じようにソファから落りてきた宇佐見さんが、抱きしめて目元にキスしてくれた。 「そんなに怖かったんか。まったく間宮は可愛いな」そう言って、ため息ひとつ……。

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