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宇佐見 -8
チュッ……、チュッ……と、啄ばむようなキスが繰り返される。目元から頬、鼻、額……。
「宇佐見さん……」
「ん?」
薄暗い中で見える、宇佐見さんの顔。その瞳は、オレを安心させるように穏やかで、怖かった気持ちは既に消えてしまっていた。
映画はまだ続いていたけれど、セリフも、音楽も、耳を素通りしていって、何をしゃべっているのか分からない。
そして再び宇佐見さんの顔が近づいてきたとき、オレは自然と目を閉じていた。
ゆっくりとした口付け。その唇は一度オレから離れ、そしてまた合わされた。
一瞬顔を上げた時に見えた宇佐見さんの目は、オレに何かを伝えようとしているようだった。
宇佐見さんの舌がオレの唇の合わせ目をなぞり、それから口の中に入ってきた。絡められる舌。いつ自分が口を開いたのかわからない。口の中で宇佐見さんの舌が動き回る。舌の脇をくすぐり、舌の裏、頬の裏側、そして上顎。舌を吸われ、また絡められる。
苦しくなってきたころ、鼻で息をした。そう言えば誰かに教えてもらったような気がすると、意識の奥でぼんやり考えて、そして消えていった。
再び唇が離れていったとき、オレの口から続く、銀色の糸のようなものが薄明かりに光って、そしてプツンと切れて消えていった。
「優 ……」
「好きだよ。……抱きたい、優を。……抱いていいか?」
コクンと動くオレの首、オレも好き、宇佐見さんが好き、でも、好きと言う気持ちがいっぱい過ぎて、逆に言葉は出ていかなかった。
「おいで」
宇佐見さんに促されて立ち上がったとき、ピッと言う音と共に画面が消えた。暗闇のなか、手を引かれてベッドまで移動する。寝室に明かりが灯された。
「優……」
力を帯びた宇佐見さんの目、オレを抱きたいって、そう訴えているように見える。それに答えるように、オレは宇佐見さんに抱きついた。
「顔を上げて」
宇佐見さんの手が、ゆっくりとオレの背中で上下する。あやすように、安心させるように暫く続き、宇佐見さんに抱きついていたオレの力が抜けてきたころ、耳元に声が響いた。
顔を上げた途端に近づいてくる唇。オレの下唇を咥えながら嘗め回し、その後入ってきた舌は、オレの中で暴れまわり、もちろんそれはオレの舌をも巻き込み、征服した。
「ふ、ン、んんっ……、ん」
オレ自身も知らなかった口の中の感じるところを刺激されて、背中に電流が走る。そのたびに、ビクッと身体が跳ね、オレが感じていることを知らせてしまう。飲みきれなかった唾液が、口がら漏れて流れていって、その感覚にさえ感じてしまった。
「優……」
「ん……」
「好きだ」
「ん……」
「抱きたい」
「ん……」
「ちゃんと言葉で言って」
宇佐見さんの手がオレの身体をなぞる。服の上からのその刺激はとても弱いけれど、返って先を期待してしまい、身体を震わす。
「好き。……オレも宇佐見さんのことが好き。だから……、だ、抱いて欲しっ」
言い終わる前に唇がオレの唇を塞ぐ。再び差し込まれる舌に、オレは自分から舌を絡めた。
「は、あ、ん、ゃあっ、ああ……っ」
声が抑えられない。
唇がうなじを這う。ときどき甘噛みして、舐めて、舌先でくすぐる。そのたびにオレの口から喘ぐような声が出ていく。
遊ぶように、鎖骨のあたりに留まっていた舌は、次の遊び場を求めるように移動していき、今ははだけられた胸の上にいる。
小さな、普段は意味を持たないその突起をオモチャに、舌が遊ぶ。突いて、転がして、唾液を絡ませ、吸い付く。空いている方の突起も、指先で軽くひっぱり、捏ねるようにして刺激される。最初はくすぐったいだけだったのに、いつの間にかそこも感じるようになっていた。
手がわき腹をなぞりながら下へ降りていく。窮屈だったその場所の圧迫感が無くなったことで、ジッパーが下ろされたことを知った。
「あ……っ」
下着の上からオレのモノが握られる。ギュっと握って直ぐ離れる手、それから、指先で形を確かめるように、なぞっていく。
エアコンで冷やされた空気が、硬くなったモノから垂れていたヨダレに触れたことで、下着を脱がされたことを知った。
つーっとわき腹をなぞった舌は、おれのモノには見向きもせず、両手で広げられた太ももにたどり着いた。時おり感じるチクッとした刺激。その刺激にますます煽られ声が漏れる。
一瞬舌が袋を掠める。それだけで震える身体。もっと、触れて、扱いて、感じさせて欲しい……。直接触れてもらえないもどかしさに、自分で触ろうとしたその手は、目的地へたどり着く直前に、捉えられ、離されてしまった。
「宇佐見さ……あっ」
名前を呼んだその直後、手に包まれて扱かれた。嗚呼……。
「口で可愛がってもいい?」
先頭をペロっと舐めてから、宇佐見さんが囁く。
「そんな……、ダメッ」
「口でされるのはキライ?」
「……されたこと無いから……、わ、わかんな……」
「じゃあ、……優の初めてを貰う」
手とは全く違うその感覚に、何も考えられなくなる。舌が先端を舐め、括れをなぞり、そしてまた先端へ。ヨダレを垂らしている小さな口を啜り、舌先を捻じ込もうとする。
ふ……っと、オレのものを咥えた宇佐見さんと目が合った。
「あ……あ……あ……」
刺激が強すぎて、頭の中がショートしてしまう。もうガマンできない。
「ダメッ、イクッ、もう、もう、口離しっ」
イキそうだけど、口の中に出すわけにはいかなくて、慌てて懇願したけど聞いてもらえず、ますます動きが激しくなる。嗚呼、ダメ……、もうイク……。
「ぁぁあ――っ」
まさか、口に出してしまうなんて。イッた気持ち良さよりも、我慢できなかったことにショックで、罪悪感でいっぱいで、涙が出てきてしまった……。
「泣かないで。ごちそうさま。美味しかったよ」
「えっ、あっ? ええっ?」
耳元で囁かれたその言葉を理解するのに少し時間がかかってしまった。直後顔が赤くなる。この人、オレのを飲ん――。
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