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宇佐見 -10
……髪を梳かれてるような感じがする。
……頬を撫でられてるような感じがする。くすぐったい、……でも気持ちいい。
フッと目覚めた途端、宇佐見さんと目が合った。
「ッ……」
「水、飲むか?」
コクコクと頷いた直後、ペットボトルが渡された。少しだけ上体を起こして水を飲む。
「あ……」
「おはよ」
「お、おはようございますっ」
ノドが掠れてるような気がする。最初声が出なかったのはビックリした。
「優 は感じやすいみたいだな。最後、イキながら気ぃ失ってたぞ」
起き抜けにそのセリフ! ボーっとしてた頭が瞬時に覚醒されて、顔に熱が上る。パクパクと口は動くが、言葉が出てこない。オレどうしたんだっけ? 途中から記憶が無い。
「でも可愛かったな。優が気ぃ失わなかったら、もう1回ヤってたところだったし」
チュッと軽くキスをしながら、そんなことを言ってくる。
恥ずかしくって、真っ赤な顔を見せたく無くって、思わずオレは、宇佐見さんの胸に抱きついてしまった。宇佐見さんは笑いながらオレの髪を梳いてくれた。
くすぐったいような、嬉しいような、そんな感じ。宇佐見さんの胸に包まれて、満たされて、安心してしまう。
「身体はツラくないか?」
「うん、……たぶん、大丈夫」
「なら、シャワーでも浴びないか? 一応身体は拭いておいたけど、シャワーでさっぱりしたいんじゃないか」
うわっ……。オレ、宇佐見さんに迷惑かけちゃった。ううっ、ごめんなさい。
そんなことを思ってるオレに、ニヤニヤ笑いながら宇佐見さんは、ドデカい爆弾を投下した。
「一応掻き出しておいたから腹は壊してないと思うけど……。大丈夫か?」
掻き出――っ!。
意味は分かる。分かりすぎるくらいに分かる。分かりすぎるからこそ、恥ずかしい。あうぅ……、穴があったら入りたい。
結局、腰に力が入らなくて、動けるようになったのは、暫く後だった。
動けるようになるまでの間、二言三言言葉を交わして、あとは黙ってくっついてた。満ち足りて安心できる時間。何だろ? 何も言わなくても黙って甘えさせてくれるようなカンジ。こんな時間、今まで知らなかった。
ダルい腰を庇いつつ風呂場に向かったオレに宇佐見さんは、心配だから最後まで面倒見る、って言いながら付いてきてくれた。でも、なんて優しいんだろうと感謝したのは間違いだったってのに気づいたのは、直ぐだった。
ちゃんと掻き出したか確認しないとマズいだろ、と口調だけはマジメなのに、その目は笑っていて、そして、風呂場で喘がされるオレ。鬼だ……、エロ鬼がここにいた。
突っ込みたいけどオレの腰が心配だからガマンするって言いながら、オレのモノをパクっと咥えて……、結局2日連続で飲まれてしまった……。
「優の反応が可愛すぎて、ついかまってしまう。悪いのは俺じゃなくて、優だな」
ニヤニヤ笑いながらそう言うけど、それ、反則です!
夜、自宅前まで車で送ってもらった。
週末ずっと一緒にいたので、離れるのはちと寂しい。そんなオレの気持ちを察してくれたのか、「来週末は、優の選んだ方の映画を観ような」と言ってくれた。その一言で、元気になるオレ。「うん!」と返事して、帰って行く車に元気に手を振った。
宇佐見さんから流れてくる空気が甘い……。そんなことに気がついたオレは、ひとりベッドの上で、枕を抱えながら、ゴロゴロと悶えてしまった。嗚呼今夜は寝れそうにないって思ったクセして、気がついたら朝だった。
週明け、月曜日。
「ねぇねぇ、以前お願いした件、ちゃんと聞いてくれた?」
突然和田さんが話しかけてきた。何か仕事依頼されてたっけ?
「えっと……、何の件でしょうか?」
「企画課の宇佐見さんのことよ! 好きな女性のタイプは? 聞いといてって言ったじゃん」
「あ――。タイプは聞いてないんですけど……、好きな人がいるみたいです」
「なんだぁ~。ちぇっ、有望株はなかなかチャンスがないってか」
答えた内容に間違いは無い。うん、ウソは言ってないよな。でもその答えには、ちょっとだけ牽制の意味が含まれてるのを、オレ自身意識してる。これくらいはいいよね?
そう思ってるオレを見た部長が、ニヤリと笑ったような気がしたのは、きっと気のせいだったと思う。笑う理由なんて無いハズだ。
ふと窓から見上げた空は、雲ひとつない青空だった。
今日も暑くなりそうだ。
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