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第7話
ルドゥロとリヴァーダ、2人の剣闘士が戦ったのは決勝戦でのことだった。
リヴァーダと戦うことを楽しみに勝ち上がってきたルドゥロは、期待通り五体満足で勝ち上がり今目の前に不敵な笑みを浮かべて立っているリヴァーダに歓喜した。
久々に始まる前から心躍るような戦いへの期待で荒れる鼻息が抑えきれなかったほどだ。
両者どちらも全く譲らない高レベルな試合に、観客は大きな歓声を上げた。
リヴァーダの右目が切りつけられた。
ルドゥロの左耳がそがれた。
体の一部を失い尋常じゃない量の血を垂れ流しながらも、笑みを浮かべながら戦う2人の剣闘士の姿に、観客の声は徐々に勢いを失っていった。
目で追えないような、血で舞台を濡らす2人の戦いに観客はざわつき司会者は青ざめ始める。このままどちらかが死ぬようなことになれば重大な外交問題にも発展しかねない。
司会者はこれまた青い顔の運営員の耳打ちを受けて
『こ、この試合、引き分け!両者なおれ!』
と叫んだ。
が、それでもなおルドゥロとリヴァーダは止まらない。
そもそも聞こえていないのだ。
相手のこと以外視界に入ってもいない。
完全な別世界に入っているも同義だった。
結局、ミアーネの剣闘士が動員され完全に力づくで2人の試合は取りやめられた。
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リヴァーダは自分を羽交い絞めにするいくつもの腕に攻撃しようとして、咄嗟のところで踏みとどまった。
その一瞬のスキをついてあれよあれよという間に剣は奪われ、手足は拘束されてしまった。
ふと周囲を見渡してみれば、静まり返った観客に青い顔のお偉い方。自分を抑えているのはどこかの国の剣闘士たちだろう。
そして、向こうで同じように拘束されているルドゥロ。
「……あれ?もしかしてこれ、やっちまったかあ…?」
どうやらルドゥロとの勝負に夢中になるあまり周囲のことをすっかり忘れていたらしい。
今になってようやく右目の痛みも追い付いてきた。きっともうこの目は見えないだろう。俺もアイツのどちらかの耳をやった気がするからお相子だ。
しかしまあ、お国に帰ってどんな叱責を受けるやら。リヴァーダは自由の利かない身体でちょいっと肩をすくめた。
「リヴァーダ!」
そんなリヴァーダを呼ぶ、太い声。
周囲に緊張感が走ったのが分かりちょっと笑ってしまう。
「リヴァーダ!ああ、楽しかった!ありがとう!!」
その声を聞いて、リヴァーダは今度こそ声をあげて笑った。
「俺もさ、ルドゥロ!ありがとう!」
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