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第11話

「ま〜現実問題?俺今ここにいる時点で結構やばいんだよね」 「だろうな」 「意外と淡白だな、おい」 睦み合った色を残しながら2人してベッドに寝転がりながら、リヴァーダが唐突に話し出した。 そもそもリヴァーダはリオン王国の剣闘士であり、その身はミアーネの剣闘士同様厳しく自由が制限されている。 こうして1人ルドゥロの部屋にいることは異常事態であり、リオン王国の責任者が憤りながらリヴァーダを探しているだろうことは想像にかたくない。 「言ってしまえば、俺もやばいしな」 「まーそうだよな〜」 もちろんルドゥロも同様である。 治療のためという名目で多少の自由時間は許されるとはいえ、さすがに部屋に籠っていた時間が長すぎる。 「とはいえ、ここには俺に面と向かって言ってくるやつはあんまりいないが。何故か皆ビビってしまってな」 「こわ。どこの独裁者だよ」 「しかし、君も明日の朝まではミアーネにいるんだろう」 「うん。そだよ」 「それまではここにいたらどうだ?それからのことは後で考えればいい」 「んふ。お前が俺にいて欲しいだけだろ?」 「そうだぜ」 戯れのような口づけを飽きずに何度も繰り返す。 ルドゥロのラットは、まだ多少の微熱を残してはいるものの大分治まってきていた。だから初めての口づけよりもずっと余裕をもった状態で愛する相手と触れ合える事実を楽しめる。 「いざとなったら俺にも考えがあるからな!お言葉に甘えてここに泊まることにしよう」 「それは嬉しいが…考えとは?」 「んふふ。こっちの責任者は俺に《《メロメロ》》なのさ」 ピンと立てた人差し指を口元に持ってきて、密か事を話すいたずらっ子のような表情でリヴァーダが言う。 対照的にルドゥロは口をこれでもかとひん曲げた。 「む。やはり君はそういう目で見られることが多いのか」 「やっぱりってなんだよ、やっぱりって」 「だって君は世界一美しいから…」 「お前意外と恋愛脳なのな……」 「色仕掛けで誤魔化すってことか?」 「色仕掛けって…でもまぁそうかな。とはいえどこにも指1本触れさせやしないから安心しなよ、ダーリン」 リヴァーダは、ひょいと腕の力で上体を持ち上げ、ルドゥロのこめかみに唇を落とした。 ご機嫌取りか?とからかうように笑うルドゥロに、バレたか、とリヴァーダもおどけて返し2人で笑い合う。 「そうだ」 「ん?」 「俺と君はまだ番にはなれないが、恋人ということでいいんだな?」 「おっ?俺はとっくにそのつもりだぜ、ハニー?」 「ふふ、ダーリンなのかハニーなのかどっちなんだ」 「んふふ」 「……恋人ならこう言う権利もあるよな?」 「…?なあに?」 「万が一本当に指1本でも他の人間に触られそうになったら、そいつを殺してでも防ぐんだぞ」 「んふふふふふふ、物騒だなあ。でも分かったよ。てか最初からそのつもりだぜ」 「それなら良かった。君なら剣がなくともなんとかなるだろう」 「1度試合しただけなのに凄い信頼だぜ」 「ふふ」 穏やかに微笑み合う2人には冗談を言っている気配は微塵もない。 闘技場という場で育ち生きている2人にとって人の命の価値とはその程度のものなのだ。 身分も権力も関係なく人は死ぬし、自分たちは人を殺せる。 欲に走った権力者たちが作り出した狂った男がここに、ふたり。

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