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男の正体

「え…!?」 何言ってんの、この人。 いやおかしい人だとは目を開けた瞬間 わかったけど、どゆこと??? 「いやいやいや君はそこにいるの 分かってるから探してないよ!! 俺が探してるのは真っ黒くて青い瞳をした 「だからそれ俺だよ!」 ……へ??」 俺???なにが??? 「だから俺、昨日助けてもらった猫!」 「は???」 ね、猫?? …待って待って、まさかここまで重症とは。 人の家に勝手に上がってきたあげく、 猫を自分だと??? たしかに瞳の色は似てるけど ファンタジーすぎてついていけねぇ。 「あのねぇ、そもそも…」 俺は呆れてとりあえず猫探しをしてると 「ほら!これ見てよ!!」 男がそう言うもんだから チラッと見る いやチラッとじゃ終わらず 3度か4度見返してしまった。 「え、え???」 男のふわふわの黒い髪からは 黒いふさふさの耳が生えていて その背後には黒くて長い尻尾が 左右にゆらゆらと揺れている。 「こ、コスプレ??」 うまく状況を把握出来なくて だらしなく開いた口からは ついそんな言葉が出た。 「ばかぁ!そんなわけないじゃんっ」 猫耳男はプクーと頬をふくらませて ほら、見て!とでも言いたげに 耳を器用にピクンと動かして 尻尾も俺の目の前で動かしてくる。 …いやコスプレにしては完成度高すぎ。 「触ってみてもいい??」 とりあえず触ってみたくなって 手を伸ばしながら言うと 猫耳男はコクンと頷いた。 そぉ〜〜とそのまま伸ばした手で触れてみる。 「んっ」 猫耳に触れると男は小さく声を漏らした。 …ふ、ふさふさ。 昨日の黒猫と同じ。 暖かくてとても作り物には 感じられない。 ゆらぁゆらぁ その背後で相変わらずゆらゆら揺れている しっぽが目に入るから 続けて尻尾にもつい触れてみると 「…やっ!…しっぽは…やだ///」 そう言って顔を赤くしながら 俺を上目で見つめてきた。 「ごっ、ごめんっ」 綺麗な青い瞳をジッと見つめながら 俺は彼に謝る。 彼はにこっと微笑み そのしっぽで俺の頬を優しく撫でて 「で?俺を昨日の黒猫って 信じてくれた??」 「い、一応。」 こんなの見せられたら嫌でも 信じたくなる。 だってたとえ人間の姿でも昨日の黒猫と 同じ所がたくさんあるし… てゆーか、男だったんだ、猫… 俺がそう言うと彼は嬉しそうに 笑った。 その時に少し尖った猫独特の歯が目に入る。 「良かった!えへへ。 昨日はどうもありがとね! 君がいなかったら俺はどうなっていたか」 「なんであんなとこにいたんだよ??」 突っ込みたい所はたくさんあるが とりあえず俺は状況を受け入れることにした。 この子を昨日の黒猫って思う方が 人生楽しそうだし。 「あー、えっとね、昨日さ凄く雨が降ったじゃん?それで俺ね木の上にいたんだけど 滑って落ちちゃって、で、流されて あーもう だめかも。俺、死んじゃうって思ってたら意識飛んじゃってたみたいで目が覚めたら温かい水の中だった!」 木からそのまま落ちた先に川があって 流されたのか、なるほど。 「そうだったのか…で?どっか怪我してない?痛いところは??」 「ないよ!ほんとびっくりするくらい元気! 君のおかげ!」 可愛い顔で言われると男相手って分かってるのにドキンとしてしまった。

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